恋や友情、絆について

言葉が発達して様々な発明が起こり、そして本来人間には手のつけようがなかった「神なる自然」は、解釈という武器を手にどんどん利便化されてきた。だがそれは、もとは「同じ自然」だった人間自身の神性をも塗りつぶしてしまうということだ。

あらゆるものが合理化されて四角く成型される。物だけじゃない。街に出ればわかるように、みんな同じ態度をして、みんな同じことに満足し、みんな同じ不安から逃れようとしている。

そうした「眠っている人々」にとっては、「大多数の意見」こそが真理であり正義となる。政治学者ベネディクトアンダーソンが自著で言ったように、人々は文明によって作られた、ありもしないイメージを絶対的なものだと無意識的に信じて今日も「生かされ」ている。

国が成り立ち、そこにいる人々が「国民」であることを自覚できるのは、そうしたイメージがあるからだ。だがそのイメージは実体のないフィクションであり、言いかえれば、あるひとつの社会というのは想像によってしか支えることができない。

1.

そのフィクションを維持するために、あの手この手で支配の体制が講じられる。毎日のようにニュースが放映されるだろう、国会中継や悲痛な事件、バラエティ番組もそうだ、すべては計算された上で放送されている。だが陰謀というよりも、視聴者の思考停止を、つまり国民の「眠り」を持続させることに自動的につながっている様子にある。もちろんそれは人々が無意識に生きているからだ。

いつも話しているように、その無意識性は学校教育の段階ですでに植えつけられる。幼児が持っていた意識的に生み出される独創力や自発性、大胆さは徹底的に排除され「右ならえ」と「採点」の鋳型に流し込まれて、みんな同じ形となって卒業式に出力される。以後も様々な社会的な関わりのなかでその成型は保持され、より強固になっていく。

だがそのようにしなければ国家は人間を「束」にすることができないからだ。だから悪意というより、必然的にそうせざるを得ないといえる。もし個々人が散り散りになってしまえば、それこそ強奪と暴力が蔓延した地獄絵図のような世界となるだろう。「己の生き方」を持つ者すべてが、他者との共生的な観念や、その根底に流れる人間の理解を超えた同調性、すなわち良心があるとは限らないからだ。

2.

このようにして管理できないもの、不都合なものは合理化の名目のもとに排除されていくが、繰り返すように文明の発展は悪いことじゃない。それが人間に与えられた創造性であるからだ。だけども「神なる自然」を単に読み替えたにすぎない文明そのものに、愛や豊かさといった価値を見出そうとするのは、実体のない幻のなかを彷徨っていることになる。

前の手記で、個人同士が真に友情や愛情を深め合うことは「不可能」だと言ったのはそのためだ。なぜなら己が「個人」である時点で、すでにフィクションに包まれているからである。

「どうして私をわかってくれないの?」と会社や恋人に捲し立てたところで、誰もあなたをわかってくれない。それはあなたを突き放しているのではなく、わかりようがないからだ。

あなたは私の考えていることがわかるだろうか? 街で通り過ぎる人たちは? それと同じであって、どこまで追いかけても満たされない、果てない欲望を満たすためのゲームにあなたは放り込まれている。

真の疎通とは、そうした人間が作り出した「社会的な次元」から離れた、もっと別の方法でしか成すことができない。つまり幻想から「抜け出ることそのもの」が、その時点で他者との完全なる疎通となるのだ。

富にしろ、恋愛にしろ、そうした偽りの豊かさに目を奪われているせいで「忘れてしまっているもの」があるということだ。そしてそれは「とても大きいものである」ということにまずは気付かなければならない。

3.

ではその忘れているものとはなんだろうか。

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