あまりに自由ゆえ

生きていることに
息苦しさはないかな

どうやっても
それを解消できないだろう

ひとときの快楽は
すぐに消えていく

結局のところ
「人生は不自由なものだ」と
あなたは感じている
もう諦めるしかないとね

私もそうだった

若い頃に夢見た世界は
ただの夢でしかなく

蓋を開けてみりゃ
惨めさと貧しさ
怒りと悲しみしかなかった

世間は冷たくて
生活していくことが
とにかく大変で

へこへこと頭を下げて
やっと頂けたお金は
支払いにすべて消える

だがなによりも
怖くてたまらなかったのは
この理解不能な人生の
狂ったようなスピードに流されて

一番大切なものが
消えつつあったことだ

 

1.

当時私も妻も遅くまで働いていた

いつも帰りはスーパーに寄って
カチカチになった安い弁当を買う

それを2人で分けていた

深夜の静かな部屋
病室みたいな照明が
食卓の私たちを照らす

「最近腰が痛くて」と
苦笑いする妻の指は
もう骨のようだった

暮らしは貧しかった
順調とはいえなかった

寒い布団で寄り添って温め合い
数時間の後には
また早朝のアルバイトに向かう

そんな繰り返しの日々だ
同じことを繰り返していると
あっという間に時が過ぎるのを実感する

この人生の先にはなにがあるのか

ただひとつだけ確定しているのは
私も妻もいずれ
暗いどこかへ消えていくということだ

世間に無視されたこの2つの魂が
どのように消されるのかはわからない

映りの悪いテレビのように
ノイズにかき消されていくのか

画面の向こうに妻は消えていくのか

そしてこの狭い部屋で交わした
誰も知らない2人の会話だけが
残響として残るのか

何千年後の霊能者は
「どうやら夫婦が暮らしていたらしい」と
私たちの痕跡を聞くのだろうか

すべてが切なかった

頑張るってなんだ?
頑張って何になるというのか

私たち夫婦は頑張りつづけて
どこへ向かっているというのだろう

この虚しさをどうすればいい?

愛する人と残された時間を
濃密に過ごすだけ?

それもいい
確かにそれは素晴らしいことだ

だが儚さが抜けない
悲しみながら笑うことなど
私にはできない

その笑顔をみるたびに
指先に触れるたびに
胸が締め付けられる思いがした

鏡に映る自分の顔

おまえはよくやってる
そんなにぼろぼろになって

どうしていいかもわからず
なにを信じていいかもわからず
ただ迫り来る日々に怯えて生きてる

それでも容赦なく
日々はなにかを引き裂いていく

2人で作ったカラーボックスも
夏祭りでやってきた金魚のポニョも

その多くは
悲鳴と苦しみのなかに
助けてほしいと
私の心に引っかき傷を残して
消されていく

どうすることもできない
なにをしてやることもできない

なぜこんなに不条理な世界に
生まれてきたのだろう
これじゃ悲しみを味わうだけのために
産み落とされたようなものだ

そしてもうすぐ私や妻の番がくる
それはわかっている

だがそれだけは
まだ少し待ってくれないかと

ずっとそう祈っていたわけだ

 

2.

その解決のために
私は賭けに出た
もちろん逃げ切るためだ

このクソのような世界から
彼女の手を引いて
一度でも幸せを感じてもらいたくて

この世界のどこかに
足掛かりが隠されているはずだと

鍵がどこかにあるはずだとね

そうして図書館に通いはじめた
いろんな分野の研究を開始した

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録はお済みですか? 会員について

この記事を保存・共有できます。

Notes , , , , , , , , , , , , , ,

コメント・質疑応答

会員記事のコメントは記事上ではログインしないと表示されません。
会員の方はユーザー名が入ってしまうので別名を希望の方はこちらで申請してください。
連続投稿する場合は「自分の最初のコメントに返信」してください。
記事に無関係なコメントは禁止です。良識の範囲内でご利用ください。
業者からのスパム広告を防止するシステムを採用しています。短期間内に連続投稿をするとシステムにスパム登録されてしまい一切の投稿ができなくなりますのでご注意ください。

  1. tamatama3 より:
    このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
    • 涅槃の書-自分 より:
      このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
  2. ハイライト より:
    このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
    • 涅槃の書-自分 より:
      このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
    • ハイライト より:
      このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
  3. tomonori より:
    このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。

コメント・質疑応答

  関連記事