あの子が笑った

たとえば動物にふと笑いかけているとき

「かわいいなあ」とか
「ちいさいのに頑張ってるんだね」とか
そんな解放された心が
こぼれる笑みとして現れているわけだが

同じように
誰かがあなたに笑いかけてくれた光景を
いくつか思い出してみようか

幼い頃や学生の頃
または最近でもいい

親や友達や当時の恋人が
あなたにニカっと笑ってくれた

懐かしい光に包まれて
まるで写真におさめられたみたいに
その瞬間が記憶に残されている

ところがそうして思い出していると
なんだか切なくなってくるかもしれないね

それはその素直な笑顔を通じて
この世が実は幻であるということに
うっすらと気づいてしまうからなんだ

たとえば「幸せが怖い」という人がいる

それは吹けば消え去ってしまうように
思えてしまうからだが

ところがその人は
不幸もまた吹けば消え去ることに
気づいていない

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