あなたは何者なのか(3)
これまでを軽くまとめると、まずあなたの正体は時間(空間)であること。時間の経過によってあらゆる存在が出現し、持続し、変化する。つまりあなたが存在しているから「あなたの世界」は現れることできる。
またあらゆる法則も同様である。
時間の経過により出現した対象は、そのままでは単発的な現象でしかない。だが「あなたがそれをつながったもの」としてみることで因果関係が成立する。ボールを離すことと地面にそれが落ちることは、あなたという意識がそれを統合していることで「一連の出来事」として認識する。
「それをつながったもの」としてみるのは、前回話したように「自動的にスイッチオン」するようにプログラミングされているからだ。
つまり対象の出現は時間の経過により起こるが、その出現したものがその後「どのような状態であるか」も時間の経過により実現されている。要は「単発の現象だけ」というのはありえない。現象は継起することで認識される。そこにあるのは常に残像のようなものであり、つまりあなたがそれを「認識している時点」で、すでに因果関係の法則が適用されているのである。これは知性というものが関係しているが詳細は後述する。
1.
そこにコップがあるならば、コップがなかったという過去を認識の前提としている。存在は必ず相対的な前提条件を要する。それはコップの出現でありつつも、その出現そのものが結果なのであり、その原因(コップがなかったこと)を想定してそれを見ているから、コップがそこにあると認識できるのである。
だからここで大事なのは「もしAならばBである」という仮言的判断は「B」はいまそこに認識している結果であるけども、その原因となる「A」はいつもみつけることができないということだ。そしていまここに見ている「B」でさえもすでに「C」であり「B」は虚空に消え去っている。
水がいま出ているのは、寸分前に蛇口を捻ったからであるが、水が出ている「いま」は蛇口を捻っていることを見つけられない(蛇口から手を離していないという話ではない)。だから「いま」は常に結果であるが、その原因とされているものはいつも幻なのである。それが「認識している」ということであり、因果関係はいかなるときも「すでに適用されている」のである。
大事なのは、こうした原因と結果の関係は外の世界が絶対的な法則としてあなたに与えてくるものではなく「あなたという時間の経過のなかでそれが成立している」という見方にある。
「なんでここにコップがあるのだろう」と思い出せないとき、あなたは原因を探すだろう。実はその「もの忘れの状態」が真実を暴いているのである。普段はそれが自動的な因果の成立により見えなくなっているだけなのだ。認識すること=因果律の適用と捉えておけばよい。
2.
さて前述のように「何かがそこにある」はその実在性や状態を含んでいる。そうして認識してしまったもの、いわば五感を通じてダイレクトに感じられるものは拒絶することができない。せいぜいそれがあることを承知しながら無視することしかできない。
そうした「根源的な認識」は植物が朝の光に花を開いたりするようなものと同じで、人間の脳にあらかじめ備わっている「知性」となる。
知性は思考能力というよりも「本能」などとよばれるようなレベルにある。 オートマティックなものだ。だから「何かがそこにある」と認識することは、生物としての「基本的な法則適用能力」といえる。繰り返すが「こちらが適用している」のだ。それを忘れてはならない。
知性の認識能力とは、心の世界に浮かんだ名もなき対象に対して「知性自らの法則性を与えること」でそれが表象化(意味化)することにある。つまりあなたの知覚している世界となる。
しかしその適用は生得的にプログラミングされているようなものであり、いわばボタンを押したらランプが点灯するような「回路」として脳に実装されている。ボタンを押せば点灯、それは問答無用にそうなる。それが知性だ。
3.
その自動稼働する知性により見えている因果世界に巻き込まれず、その知性そのものを俯瞰して眺めていることが、己が「時間の主」であることの領野に立っていることであり、瞑想が到達するのはこの「知性の俯瞰」である。
そうして知性を眺めているとき、自分の脳や体(五感)は世界と対応し合っているものであり、それは自己意識とは直接的な関係がないことを悟ることになる。そこにあるのは自然界というひとつの様子なのであり、己の「勝手な意思」がその調和を乱し続けていたことがわかる。
その「勝手な意思」とはなにか。
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