絵本作家

知人家族に連れられてくるちびっ子たちが
退屈しないようにと
うちにはいくつかの絵本があるのだけども

古くから親しまれてきたその童話や
児童書を開いてみれば
登場する存在は個性豊かで
みんなどこかクセがあって
奇妙な世界だけども随所に愛らしさが感じられたり
一筋縄ではいかない魅力的な世界が広がっている

喋りだすウサギやハンプティダンプティ
スクルージにルンペルシュティルツヒェンに
アースラにティンカーベル

タンスの引き出しの毛皮のコートを
かき分けると雪の森に出たり
気づけば星座のあいだを走る列車に乗っていたり
魔法でカエルに変えられてしまったり

たしかに大人からすれば
荒唐無稽な作り物だろうけども
だがあなたもそうだったように
子どもたちにはそんな世界のほうが自然なんだ

子どもは自分が不自然に思えるものには
関心を示さない

なぜなら不自然に思えるものは
理屈や理解を要するからであり
そればかりか彼らはまだ自分の感情すら
言語化できない不自由さもあるわけで

それゆえ喋り出す動物は
幼い子どもたちの心の代弁者として
内面を外在化した投影であり
つまり”安心”できる存在として認識されている

言いかえれば、”その子”の内面が
ウサギをそのように喋らせているんだ

だから、善悪、恐怖、嫉妬、好奇心、etc..
いろんな感情を象徴とするキャラクターは
その子の心の内面の投影であるゆえ
まさに”自然な世界”であって
それがグリムやディズニーの世界だったりするわけだが

たとえばあなたも
言葉が通じず文化も違う異国に放り出されたとき
そこで唯一安心できるのは
“自然に”感じられるものだろう

それは本能的で直感的なものであり
物事の意味や因果関係などの打算を超えているんだ

つまり言葉も感情もうまく表現できなかった
幼い子どもの頃に戻っている

 

大人の世界

さてその観点に立ち返って日常を見渡してみれば
当たり前だと思い込んでいる世界が
いかに奇妙であるかがみえてくるかもしれない

奇妙に思えるのは
当たり前にあった怒りや嘆きや不満足が取り払われ
いろんな歪な存在が動いているだけの世界が
ただ現れていることに気づくからだ

登場する存在はみんな個性豊かで
どこかクセがあって
奇妙だけども時折愛らしさも感じられたりと
一筋縄ではいかない魅力的な世界

そう、あなたがまだ”言語化”できなかった幼き頃に
心の投影としてみていた世界そのものが
いま目の前に広がっているんだ

最初は不自然に感じられるが
やがてそうでもなくなってくる
むしろ安心さえ覚えてくるようになる

だがここでひとつ
自らに問うてみてほしいのだけども
大人になったあなたは子どもの頃よりも
“心”を言語化できるようになったのだろうか?

言語化できないままに現れている世界に囚われて
そのなかでただ解釈させられているだけじゃないだろうか

幼い日のあなたは絵本を開いたり
親に読み進めてもらう物語の1行ごとに
心の世界が描かれていくその様子に喜びを感じていた

それは冒険でもあり怖さでもあり
そして勇敢さや希望に溢れた”あなた自身”の現れだった

つまりあなたはアンデルセンやグリム兄弟が
書いたものを読んでいたのではなかった
“あなたが読むもの”を彼らが書いていたんだ

それはいまの日常世界も同じ

ところが大人になったあなたは

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