ナルキッソスとエコー

追い詰められて苦しみ続けていた頃
子猫が私の前に現れた

前にもどこかで話したことがあるね

飼えるような余裕などなかったが
ずっと家の裏で泣き続けていて
親猫が迎えに来るだろうと思っていたが
予想は外れてしまった

暗くなった裏口を照らしてみれば
手のひらに乗るほどの小さな生命が
その場から逃げようとしているのをみつけた

私たち人間が破壊を尽くして
恩寵に見放されたこの地表で
そんな小さな体で生きようとしていた

当の人間である私すら
もう絶望しているというのに

だがその姿をみて
自分を情けなく感じたのを覚えている

 

1

そうして猫との暮らしがはじまった

これは随分昔の話でね
長生きして
いまはもういないのだけども

最初のうちは動物病院に通い詰めで
愕然するばかりの治療代だったりしたが
そうして払ったお金は
思いがけない仕事や収入があったりして
不思議とどうにかなっていた

やがて元気になった
女の子だった

一緒にラバーボールを
何往復も転がし合って遊んだり
上ってはだめな場所や食べ物のいいつけも
ちゃんと理解していた

私のそばから離れなかった
いつも少し後ろをついてきた

だけどもやはり私は自分のことが手一杯で
一緒に遊んでいてもいつも上の空だった

明日はどうなるんだろうとか
来月の今頃はどこで何をしてるのだろうと
不安ばかりの毎日に閉じ込められていた

あまりに心が苦しいときは
彼女を胸に抱いて癒されようとしていた

だが求める気持ちばかりで
私はその温もりを
ほとんど感じ取れていなかった

 

2

ところでギリシア神話には
たくさんの神や精霊ニンフが登場する

神といっても
煩悩の塊のような存在たちだ

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