唯識と脳と現実変更(1)

ノーベル生理学・医学賞を受賞したロジャー・スペリーの業績に「分離脳」の研究がある。この成果によって現実世界の謎を解くひとつの鍵を人類に与えることになった。

まずこの話を理解するにあたって最初に押さえて置くべきことは、脳は心臓や胃とおなじような「単一の機能」を、ただ複数備えている器官であるということだ。

視覚野や言語野というふうに担当するエリアが別れているが、そこにあるのは神経回路のオンオフのみであり、この世界がグラフィカルに見えたり、情緒豊かな交流を他者と過ごしていることの根本的な素材が脳に備わっているわけではない。

目の前にあるパソコンやスマホで美しい風景の画像をみることができるが、そのディスプレイを分解したところで基盤(ハードウェア)があるだけ、脳はそれとまったく同じとなる。

1.

脳には右脳と左脳がある。その2つは脳梁という神経の束で繋がり、互いに信号の伝達をしている。ロジャー・スペリーは癲癇(てんかん)の患者の治療の目的でそれを切断し、その後の数十名との患者とのやりとりから、右脳左脳の役割を発見するに至ったというわけだ。

しかしこの発見以後、巷で右脳タイプとか左脳タイプというような特性診断が流行したがそれは見誤っている。この発見で得られたのはそういう個人別にふるいをかけるものではなく、人間全般の認識や認知に関わるものである。

厳密な相違はここでは必要ないので省くが、目や耳や顔の筋肉、そして腕も足も、それらを管理する脳は「真反対」の位置に配置されている。つまり右視野や右耳、右半身は「左脳」が司り、左視野や左耳、左半身は「右脳」が管理している。

これは生物が生存していくうえで、そのようになってきたとされる。こうした自然の摂理によって仕組みが変わることを「自然淘汰」という。自然に適合したものだけがいま存在しているというわけだ。

2.

そこで先のカリフォルニア工科大学のロジャースペリー研究室で明らかになったことがあり、それは右脳と左脳が別々の処理を行っているということだった。

ある分離脳手術をした患者に検証をしてみた結果、べつに人格が二重に存在するだとか、そういう異変は何もなく、それまでの重度な癲癇の症状だけが消え去って、完全に普通の暮らしを送るようになっていた。すべてを普通に認識し、普通に解釈し、普通に話せる。

ところが脳は左右で切断されている。そこで左右の視野への情報を個別に与えたとき、どのように認識されるかのテストを繰り返してみたところ驚くべき結果を知ることになる。

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