あなたは何者なのか(1)
いまそこに世界が広がっている。あなたの見たままにある。周囲の音も聴こえるまま、肌への感触もその通りのままだ。それは偽りではない。どんなに拒絶したい光景でも、それがそこに見えている以上、世界はその通りにある。
だが知っておくべきことがある。
それは「世界」はあなたの外側にあるのではなく、あなたの心のなかに浮かんでいるということだ。
そして心の中に世界が浮かぶということは、ある条件が最初から前提とされていることを意味する。それは空間と時間である。
空間がなければ人や物は姿を現わすことができない。空間があるからすべては配置できるのだ。ゆえに空間はその世界を在らしめている大前提であり、言い換えれば「空間があなた」なのである。
イメージでいいから、いまそこにあるものを心の中からひとつひとつ消し去ってごらん。椅子や壁、靴、猫、自分の体、そうして消していくと最後に空間だけが残る。空間だけはどうやっても消し去ることはできないだろう。
つまり空間はあなたの意識そのものということだ。アダムはエバ(イヴ)の暮らすスペースだった。意識のなかに世界が存在するのである。
1.
さて次に時間について話そう。あなたは常に「考え事」をしている。考えるゆえに感情的になったりもする。だがそれは紙芝居の1コマだけのような静止した空間だけでは行使できない。
怒っているときを思い出してみるといい。当然原因があるわけだ。怒るには、A→Bという変化が必要とされる。思考が継続することもそうだ。
たとえば「思考」を1枚の絵として描こうとする。様々な表現ができるが、たとえそこに「怒っている顔」を描いたところで、それは瞬間的にそのような顔や素ぶりに見えているだけのものとも受け取れる。
つまり前後の連続した因果関係がなければ、思考も感情も成立しない。パラパラ漫画のように別の絵に進行させたり、同じ紙上でも四コマ漫画のような区切られた絵の連続性がなければそれを表現できないのである。
そしてここが重要なのだが、空間は対象を配置できるけども、実際それがそこに「ある」というとき、それは「ない」という状態からの「出現である」ということにある。すなわち時間の経過がなければ、物体すら存在していることを成立させられないということだ。
2.
それは出現だけではない。妻が目の前にいるとき、彼女はそこに居続けているわけだが、それは対象が「持続している」ということだ。A→→のようにね。妻がそこに「居てくれている」ためには、やはり時間の経過を必要とする。
彼女が笑ったり、料理や掃除など何らかの動作をする。猫や犬たちが走り回っている。それらの「変化」もやはり連続した時間が必要であり、動きが実現するためには時間の経過と不可分の関係にある。
ゆえに時間とは空間そのものを在らしめるものであり、いわば見方の違いにすぎず、空間と時間は「同じものである」といえる。
では再びあなたの正体とはなにか。
それは「時間」なのである。
蛇口を捻れば水が出る(A→B)。この「別々の絵」は時間によってそれがひとつの連続変化であると認められるが、それを包摂してひとつの流れであると認めている者が、あなた(時間)なのだ。
3.
さてあなたの正体が時間だとわかった。それは「流れ続けているもの」だ。ここでさらに理解を深めるために、仮に「あなたという時間」が制止したらどうなるのかを考察してみよう。
先に答えを書けば、時間のなかで世界が存在しているのならば、時間が止まるとき「世界は存在しない」ということになる。
それはどのように理解すればよいのだろうか。
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