信じる力が自分を救う(前編)

すでに持っているというのに
ひとはいつも探している

それはここにあるのに
目の前にずっとあるのに
どこにあるのかわからずに
途方にくれている

だからその手がかりを
いつも求めている

幸せだったり
恋愛だったり
充実できる何かだったり
満足のいく環境や待遇だったり

でも自分がもともと持っている
ありあまる豊かさを感じていなければ
どれだけのものを手にしたところで
やはり探し続けることになる

探し物はこれですよと
企業は街のそこらで宣伝し続けている

恋愛が実は商品化されているものだと
いうことに人は気づいていない

恋愛は崇高なものであり
この物質世界のなかで
人間性の本質に迫るものであると
思い込んでいる

確かに愛は素晴らしい
だがそれは
あなたが恋愛をする以前に
すでにそこにあるものだ

恋愛は対象を重視する

相手が誰でも「恋愛対象」に
なるわけじゃないだろう?

この社会は物と物の交換で
成り立っているのだけども
それは恋愛も同じ

良いなという思う「商品」に見合うように
自分を魅力的にみせることで
交換を成立させようとする

ところがその魅力的という基準は
時代や流行によって違ってくる

つまり自分も相手も嘘なんだ

嘘が演じられている相手を
嘘の自分を演じて交換する

誰だってその時代に合った
服装や髪型をするだろう

平安時代のような服装や
ちょんまげなどしない
考え方や話す内容も
知らずのうちに時代に染まっている

そうして時代に作られた存在を
さらに自分も自ら気づかずに備わった
時代的な価値観によって判断をする

好みのタイプだとか
自分の理想だとかだね

しかしそれは相手の何を見ているのだろう
またそれを見ている自分は誰なのだろう

そうして互いにメリットがある場合に
トレードは成立(成就)するわけだが
それはそのときの欲求が満たされただけ
でしかない

その欲求が最大に満たされていることを
二人は愛の強さだと思っている

だが他のすべてと同じように
欲求が満たされてしまうと
同じものは欲しくなくなるわけだ

そうして相手の汚点ばかりが
目につくようになる
もうその商品の流行は過ぎており
新鮮だった賞味期限も終わっている

化けの皮が剥がれてくるなんて
よく言ったものだ

だが「化け」は見ているこちらが
錯覚していたものであり
つまりそれは己自身の化けの皮なのである

その化けの皮が剥がれた「化け物」と
この先どうやって過ごしていこうか?
結婚なんて契約までしていたら
一生の不覚だと背負い続けるかもしれない

そこにいる相手を化け物だと
みている限りはね

だから私たちはまず
自分が何者であるのか
気づかなければならない

思考や感情による決定は
本当に自分自身の意志なのか

外部に着火されただけの
衝動ではないのか

あらゆるすべてが
外的着火であることに気づいたとき
あなたは真の幸福、真の自由
そして真の愛を手にすることができる

化け物とは自分のことだったということ
その皮を脱ぐときに本当の世界が現れる

今回は私自身がそれに気づき
そしてどのようにして
至ることができたのかを交えながら
話を進めていこう

私のケースではあるけども
あらゆるすべての背後にあるものは
「同じ」であるから参考になるはずだ

 

1.無信仰という暗闇

さて欲求を満たすことが
幸せであると勘違いさせられてる以上、
「幸せ」を探すためのメソッドは
世の中にたくさん転がっている

自己啓発や恋愛本なんかが
今日も新刊がたくさん並んでるはずだ

テレビドラマや映画のなかでも
ハッピーエンドになる道程が示される
アマゾンのレビューなんかもそうだし
知人を伝わってくる情報もそう

そんな社会にまんまと乗せられて
探し物はこれこれで
探す方法はこうなのだと
あなたは理解してしまうわけだ

するとあることが前提とされてしまう

それは自分は「まだ」満たされていない
ということだ

その欠乏感は不安や焦りをうみだし
同時に恐怖に支配されるようになる

失うことへの恐怖
死への恐怖

よって利己的になる
そのままじゃ自分が浮かばれないからだ

だが内心は利己的であるくせに
満たしてもらいたいから
いい顔をするようになる

自分は思いやりのある人間だと
自分は痛みのわかる人間だと
そういう表面で利己心を覆い隠してしまう

その傾向はやがて自分を見失うことになる

これだけ優しいはずの自分が
どうして憎悪を感じているのか

他者への思いやりは
素晴らしい感情のはずなのに
どうしてイライラするのか

ここで心がバラバラになる

そうしてますます
企業の売り出し商品に魅了されてしまう
「あれこそが心の穴を埋めるはずだ」とね

幸福とか恋愛とか裕福とか
それらはずっと売れ筋のカテゴリーにある

だがそれらはコンビニのお菓子と変わらない
食べたら終わり
しばらくしたらまた欲しくなる

このようにあなたの欠乏感に目をつけて
企業はどんどん儲かる仕組みになっている
そのためにあなたはせっせと
どこかで働き続けるはめになる

うまい仕組みだろう
これだけ日本が物質的に豊かでありながら
自殺者が異常に多いのは
恐怖心と欲求に揺れ動かされていることを
とてもわかりやすく表している

日本人は無宗教であるといわれるが
その言葉は正しくない

無信仰なのだ

信仰とは自分の信じるものがあって
それに従うということ

つまり軸があるということである

人間が信仰を失うことは
闇のなかに放り出されるということだ
それは人間の本来的な資質である
創造という光を失うことを意味する

間違えてはならないのは
信仰することと宗教への入信は
違うということだ

また特定の誰かを崇めるということでもない
イエスや釈迦は偉大だが
彼らにべっとりと付きまとうことが
信仰ではない

宗教や聖者は
「信仰の大事さを教えてくれる」存在であり
入信や入門しなければ
救ってもらえないというものではない

というよりそのように
結びつけてしまっている時点で
すでに何らかの操りの糸のなかに絡まっている

つまり光は失せているということである

 

2.すべてが一緒にあった

先日ホームセンターに立ち寄ったとき
どこかでみたことのある
テーブルセットが展示してあった

同じタイプのものだった

生活感を漂わせる木目調の天板
それを支える金属製の細いパイプ

いかにも庶民的といった感じの
チープさがある

私はこの椅子に腰掛けたことがあり
そのときテーブルには
温かいお茶が用意されていた

それはどこでだろうかと
記憶を探っていたところ

「ああそうだ、あの老夫婦の家だ」
と思い出した

もう20年近くなるが
当時私が親族の介護を受け入れたとき
狭い部屋では寝場所が確保できず
1日だけその老夫婦の家に
泊まらせてもらったことがある

彼らの居宅で迎えた朝は
とても清々しかったのを覚えている

窓から差し込む光は白く
空気はとても澄んでいた

冬の寒さが心地よかった

子供のころに
早起きした日曜日の様子に似ていた

小さな私は着替えて
ゆっくりと玄関をしめて
まだ静かな街を歩く

別になんの予定はなくとも
ただワクワクしていた
それを感じているだけで楽しかった

そうしていろいろな空想を巡らせて
遊んでいたものだ

風に舞う落ち葉の塊が
生き物のように戯れているのをみたり

空腹や便意やらの肉体的な欲求は
体が自然とつながり合っているからだと
わかっていた

すべては流れのままに起きているのだとね

つまりあの頃
私は自然がそれ自体で生きていること
実感していた

私を含めたすべてが共にあったのだ

だがいつからか
「根拠のないもの」からは遠ざかり
やらなければならないことばかりに
埋め尽くされていた

保証のあるものばかり
裏付けのある確証ばかりを求めていた

世間とは自分を置き去りにする
緊急避難の船であり
必死にしがみつかなければ
漆黒の大海に飲み込まれてしまう

生きていくことがあまりに怖くて
般若心経も聖書も持ち歩いていたが
釈迦やイエスが言っていることは
実は民衆への気休めなんじゃないだろうかと
疑う気持ちが常にあった

それでも心労から逃れたいがために
自分をごまかすために読んでいた

当時の私は自分の人生を呪っていた
いつもネガティブなノイズを帯びていた

 

3.小さな共同体

実際そうだった

1+1=2である以上、
現実にはどこにも逃げ場がない

生きていくためのお金は足りないし
働くにしても時間が足りない
破産するにしても残された人々はどうなる?

生まれた境遇のおかげで
多くのものを背負う運命にあって
その打開の為に講じたすべては失敗してきた
余計に荷物が増加する始末だった

立場の弱かった私たち夫婦のもとへ
押し付けられるようにやってきた
末期患者たちは
いつも機嫌が悪くて
散々なわがままを強いられ続けた

定期的に吸引しなければならない膿と
室内に置いた簡易トイレの糞尿の臭い
そんな狭い部屋で雑魚寝をして
ろくに癒されない肉体に鞭を打って
仕事へ向かう日々だ

だが私が支えなければこの小さな共同体は
誰知れずに朽ちていく

妻も頑張っていた

愚痴ひとつこぼさない私たちの姿に
やがて口うるさかった彼らも
それなりに互いを配慮するようになっていった

その共住していた狭い部屋で
時にみんなの笑い声が響いたこともある

みんなですき焼きをつついたこともある

だけども「さあ明日からも頑張ろうな」と
電気の紐を引いたあとの暗闇のなかで
みんなはどのような表情で
天井を見上げていたのだろうか

少なくとも私はみんなの純真な健気さと
現実の重さとのギャップに
いつも惨めな気持ちになっていた

どんなときに惨めになるのかといえば
それは希望を見出して頑張っていたのに
それが報われないと感じたときだ

それは自分のことであっても
身内の姿であっても同じ
その光景には気が滅入るような貧しさがある

そんな気持ちを抱えていたせいで
同じような悪夢をよくみていた

誰にも気づかれない小さな世界で
その家族は力を合わせて耐えていた
極めて非力なその共同体は
荒れ狂う暴風に断固として立ち向かっていた

だが木っ端微塵にされる

私たちを守っていた屋根も壁も吹き飛び
離れないようにと手を繋いでいた妻も
いつの間にかいなくなっている
宇宙の渦に飲まれて消滅している

笑いあったあの情景はなんだったのか
励ましあった温かさは
ひとの温もりは

みんなは
どこへ消えたのか

その不安が最大になったとき
いつも目を覚ましていた

私の世界に神は存在していなかった

 

4.探求をはじめる

そんな暮らしのなかで
自分と同じような境遇にあった昔の人々は
どのように希望を持って生きていただろうかと
市立図書館に通って様々な文献を調べはじめた

これは前にも話したね
実際こうした自発的な活動が
私の人生をがらっと変えた

だがそれは書かれていた知識によってではなく
内から湧き出す無根拠な衝動に
自分自身を委ねたからだ

あとでも書くがそれが信仰なのだよ
つまり「意志の光」のことだ

戦時中の記録、
特にホロコーストにまつわるものや
共同生活をしていたこともあって
キリスト教圏での修道院に関するものなど
同じ箇所をなんども読み返していた

もちろん新規の仕事をとるために
方々に駆け回ったり
銀行の融資相談や療養費軽減の手続きなどで
ほとんど時間はなかったけども
いくら頑張ってもこのまま私たちが
消滅してしまうことは明らかだった

ゆえにまだ知らない知識や
見過ごしている大事な何かがあるのではと
必死に研究を続けていたわけだ

もちろん私の小さな世界を守るためであり
そしてなにより
私自身の正気を保つためでもあった

だが開かれる史実はどれをみても
絶望が濃く現れていた

たとえばここに当時のノートがあるが、、

4世紀のナイル川の共住修道院から
13世紀のフランシスコ会までの記録、
修道士たちが共同生活を送るうえでの会則や
歴史などについての文献を調べていくうち

そうして紐解かれた過去の遺産からは
時代や個々の状況がどうであれ
「人類の歴史」とは現代の私と同じだった

人類とは心の不安を背負っている者たちの
系譜そのものであることがわかってきた

人々は他を侵略し必要以上に獲得することで
己の不安をごまかしたり
またすべてを捨てて宗教の道を進むことで
不安を乗り越えようとしてきた

選択はどちらかしかない
得るか、捨てるかだ
それは21世紀の私と変わらない

つまり愚かなことに
人類はなにも学んできていないのだ

まるで莫大な借金を内緒にして
「いい人生だった」と
先立った親をみているかのようだった

「得る」とは正しくいえば「奪う」だ
それは現代でも同じ

以前よりは血が流れない時代になったが
現在の資本主義社会でさえ
どれだけ健全な表面をみせたところで
結局は他者の落とし合いでしかない

実際そうではなければ社会は機能しない
つまりビジネスを成功させるなり
会社で昇りつめるなりするには
人の心があってはならないのだろうか?

かといって西洋文明に支配されていない
定住文明の部族民族たちを調べてみれば
確かに殺し合いや奪い合いに懲りて
和平協定を結んで発展してきたところもある

だがそれでも波乱含みだ
たとえば物資が足りないゆえに
現代人の私たちからは理解できない
様々な風習が守られている

たとえば役に立たない高齢者を
山に置き去りにしたり
また未亡人になった女性が自決するなど
民族の繁栄が保たれてきた背景には
そうした側面がある

次に「得る」の反対にある「捨てる」だが
たとえば聖書をそのまま読めば

「もし完全になりたいなら持ち物すべてを
より貧しいひとに施しなさい
そして私に従いなさい」とある
(マタイによる福音書19.21)

しかし当時の私にとって
これ以上どう貧しくなれというのか
死ねという命令にしか受け取れなかった
命を断てばイエスは私を救うのだろうかとね

確かに記録をみれば
その通りに従った人の数は相当数にのぼる

「死こそが完全である」とは
あらゆる書物に記されるお約束のようなものだ

だが夜中にみんなで笑いあったあと
部屋の電気の紐をひいた暗闇を
当時の私にはまだ受け入れることはできなかった

 

5.ただ普通でいたかっただけ

それはただ悲しみでしかない

もしその闇が救いであるならば
なぜ明かりのついた光景があるのだろうか?

介護ベッドのうえで自らの容態に構わず
周囲を気遣う老人の姿や
すき焼きの湯気
無意味に流れるバラエティ番組の音声

そのようなまどろみのような光景は
どう解釈すれば良いのか

「そんな思いを所有しているから苦しいのだ」
イエスはわざわざタイムマシンに乗ってまで
私に説教をしにきているのだろうか

所有しているから苦しい、確かにそうだろう
だがその究極に飛び込む勇気はなかった

冗談じゃない

そもそも私は妻と一緒に
幸せになりたかっただけだ

ただ普通に暮らして
動物を飼って
ゆっくりした朝の時間をすごしたり
映画を観て感想を語り合ったり

人生に大した意味などなくとも全然構わない
そんなものはどうでもいいことだ

別に金持ちになりたいわけでもないし
高い地位など欲しいとも思わない
簡素で平凡でいい

この世に生まれてきたこと
そして妻と巡り会えたこと
晴れた空の下を歩いたこと

それだけでよかったのだ
そしてそれをまだまだ感じたいのだ

なのになぜこのような究極の選択に
迫られなければならないのか
なにが「飛び込め」だ
なんで私などが目をつけらなきゃならんのだ

高みを目指している者が背負うならば
それこそイーブンだってものなのに
当時の私はいつもそんな
理不尽な嘆きにあふれていた

そうして探求の日々は続いたのだけども
文献を調べるほど絶望的だった

歴史も神学も宗教も
「救われないことが救いである」としか
読めないものばかりだったからだ

家に帰ればみんなの健気な姿が映る

世間から除け者にされた者たち
このままゴミだめのような部屋で
腐敗していくしかないのか

テレビをつければ自殺者のニュースが
飛び込んでくる

この頃に書いていたノートはいくつもあるが
大部分に「信じることを忘れるな」という感じの
前向きな気持ちが記されている

つまりそれだけ心の闇にいたということだ

 

6.光を失うとき

それでもただ信じるしかなかった

それは「1+1=2であることを認めない」
ということを信じることだ

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