ちゃんとやってるのにどうして理不尽なのか

さっき散歩をしていたら、近所の寺の前で20代半ばくらいかな、スーツを着た青年がそこの住職に「しっかりしなさい、しゃんとしなさい」と説教を受けていた。

どういう事情かはわからないが、たぶん営業の外回りかなんかで、たまたま話が進展したのだろう。そこの住職は話し好きだからね。

そこで青年は「はい、もちろんです!」と、身を縮めてかしこまっていた。

だが住職は「いやいや、あんたわかってないよ、そうじゃない」と伝えたが、彼は自分が何をわかっていないのかが、わからない。

相手を立てているし、寺の前の公道ということもあって、住職と話しながらも通行人や車を警戒して常に安全を確認している。さらには威勢の良い返事とともに、30度のお辞儀も完璧だった。彼は困惑する心のうちを隠しながら「自分に何が足りないのか」を気付こうと頭の中を高速処理させている。

そんな折に彼のスマホの着信が鳴って、あたふたし始めた。電話に出てよいのか迷った表情をみせた。

建前上の人格や、相手への礼儀、問われたことへの解明、さらに着信というアクシデントが重なって、彼は一瞬間、固まってしまった。

その後はどうなったのだろう、住職とはよく立ち話をするので今度聞いてみよう。というよりこの話は本書向きなのでぜひ使わせてもらおう。ちゃんと断りはいれておくよ。

1.

さてこの話は、あなたの日常生活でも大きな意味を持っている。人前で同じような経験があるだろう。こちらは「ちゃんとやっている」のに、思いもよらない返答が返されたときなどだね。こうした抱えきれずにパンクしてしまう状態があるゆえに、生きていくのが辛い、会社へ行くことが辛い、人と関わりたくない、と感じているかもしれない。

スーツの彼は、丁寧に接してくれた住職への礼儀や相手の面子を最優先に立てるべきだと考えていたのだろう。そうしてその場を綺麗におさめたかったのだろう。

つまり彼は「自分はやるべきことはやった」のだ。だから言うだろう。「これ以上どうしろというのか」「住職のわけのわからん問答に心をかき乱されただけだ」とね。つまり理不尽として感じられたはずだ。

こういう出来事が一度や二度ならいいけども、あなたも知っているように、ほぼこれの繰り返しが人の世となる。繰り返されることで、理不尽はどんどん積み重ねられていき、やがてその重みに耐えられなくなる。

関わる相手への「なぜ?」ほど、己を縛りつけるものはない。なぜならその答えは自分だけでは決して解き明かすことができないからだ。すべては相手の心のなか、真実を知りたいならば、相手を追求するしかない。しかも吐き出された言葉が真実なのかすらわからない。

恋愛関係なんかはいつもそうだね、どうして相手を信じることができるというのだろう? 結局は相手の言動から推測されるいくつかの要素の、その平均点で判断するしかない。

でも世の中にはスーツの彼のようなタイプばかりじゃない。対人関係に「まったく動じない」人たちがいる。彼らはいったい何者なのだろうか。それは大きく2つに分類される。

2.

ひとつは心を閉ざしてしまっているタイプだ。かつては彼らも熱い心を持った冒険者だった。だが「どうにもならない状況」に悩まされ続けて、結果その選択をするしかなかった。つまりスーツの彼が「住職の言葉の意味」を理解することができず、この先も同じ状況に直面し続けたら、やがては「心を閉ざすこと」こそがテクニックであると思い込むようになる。

だけどもそれは危険であるといえる。なぜならば、心の開度というのは一時的な作用として留められないからだ。つまり特定の対人関係だけではなく、人生全般から光を失ってしまうことになる。

心を閉ざすほど、マシーンのように人間の群れの中を泳いでいけるが、その代わりその海はとても冷たく、そして暗く、虚しさだけしかない。

逆に言えば、対人関係でダメージを受け続けてしまうような人は、喜びへの感度も高いといえる。その場合は、生身の身体でトロピカルな海に飛び込んでいるから、楽しい時は最高だけども、常に他の生物の獲物として狙われ続けることになる。

大抵はボロボロで傷だらけだ。そのおかげで恐怖に支配されてしまって、もう海に出ることをしないかもしれない。すると人生は怯えるだけのものとなる。

そこから「人間」を捨ててマシーンになるのか、それとも人間に留まって怯え続けるのか、はたまた「もうひとつの道」を見出すのか、となるわけだ。

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  1. ひとつの光 より:
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