言葉のやりとり

白い紙があって
そこに文字が一つずつ現れていく

そういうのをイメージしてみよう

熱を加えると
字があぶり出されていくとか

目の前のひとが
ゆっくり何かを書き出しているとか

インターネットのチャット画面とか

まあいろいろあるね

そんな真っ白なところに
徐々に文字が浮かんでくる

なんだろうと眺めていると
それはとても心地の良い
一文に出来上がった

あなたは嬉しい気持ちになる
そしてあなたもそこに返事を書く

嬉しい気持ちを文字に表現する

 

1.

さて書かれた言葉ひとつで
人は喜んだり怒ったりするわけだ

これは日頃の人間関係そのもの

たとえば
相手の態度がわるい

最低な言葉が記されているように
あなたは相手をみながら
そこに「文字」を読んでいる

あなたも仕返しの言葉を
「見えない紙」に並べたてる

表情として
態度として

動物が全身で相手を威嚇するように
怒りを記号として表現する

それが「見えない紙」に記されていく
まるでチャットのようにね

相手はそれを読んで反応するわけだ
再び記号になって
あなたに「伝えよう」とする

 

2.

ところで一体
何に腹を立てているのだろう

挑発してくるひとがいるとして
それは言葉で煽っているのだけども
あなたはただその文字の羅列に
反応しているだけでしかない

「そりゃ相手がそういう感情をもって
それを言葉に置き換えているのだから」

あなたはそういうけども
じゃあどうして
本を読んで笑ったり涙を流すのだろう?
書かれている文字にワクワクしたり
不安になったりするのはなぜだろう?

それは固定された記録物でしかない
感情なんてのはもっていない
読み手が自分のなかで浮かべられたものに
心を揺さぶられているのだ

もしここにひどい言葉が書かれていたら
あなたは嫌な気持ちになるだろう
私に一切の悪気がなかったとしても
「あなたにとっての私」は悪人となる

つまり人間というのは
自らそこに何かを作り出そうとする

相手がそれを与えるのではなく
自分の方からそれを見出して
そこに「参加」をするのである

サンタクロースが実在しないなんて
誰でも知ってる

じゃあ大人はこどもに
その「真実」を教えるのだろうか

そうじゃないね

こどもたちが靴下をぶら下げたりして
健気に信じているその姿に
大人は一緒になって
その「嘘」を温めようとする

本当はありもしないものを
一緒になってそこにみている

星に願いをかけてみたり
動物に名前をつけて
家族として迎え入れたり

それが人間の世界の「真実」というものだ

 

3.

ところが人は不都合に直面すると
「事実」を探し求めるようになる

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