見たいものを見ることができるとき

あなたは日頃から
体と完全に同一化している

ゆえに体と精神が互いに拘束しあう

毎日ヘトヘトに疲れているだろう
嫌々な気持ちで会社勤めなどしていたら
すでに朝から体は重いかもしれないね

だけども本当は体は疲れてなどいない
どんなに肉体を酷使した午後であっても
体はそのエネルギーの消耗を
喜びに感じている

たとえば他のことを一切忘れて
スポーツなんかを楽しんだとき
確かに体は汗だくで
筋肉も燃え上がるように熱いけども
そのとき全身が放っているものは
決して悲鳴なんかじゃない

安らぎに包まれているのだ
それは体が捧げる
大地と空への感謝の祈りなのである

つまり日頃の疲労感とは
精神の苦しみが
体を縛りつけているものであり
いわばそれは呪いのようなものだ

だから精神が切り離されるとき
体は生き生きしはじめる

病気をはね除け
鈍重さが消えて怪我などの危険も
うまく回避するようになる

まるで自分の意思とは無関係に
体が動いているようになる

カゴから放たれた鳥のようにね

 

1.

そして同一化からの解放は
精神にも大きなボーナスがある

これは非常に多大なものだ
なぜならこれにより
人生が完全に幸福へと転換するからだ

たとえばいまそこで
「体はいつも自分を運んでくれている」
ということに気づいてごらん

実際そうだろう
どこかへ移動するにも
何かを食べたりして味わう経験も
体があなたの意図に従ってくれているから
それらが可能となるのだ

片時も休むこともなく
あなたの意思の通りに動いてくれる

だから体を愛してあげよう
愛する眼差しで体を見守ってあげよう

そうやって最初のうちは
できる限り何度もそれに気づいて
「ありがとう」と伝えていくといい

炎天下の営業回りを頑張るその足に
電話のボタンを押すその指に
「ありがとう」と感じることだ

そうしてしばらくやっているうちに
体と精神が別々のものとして
明確に切り離されるようになる

つまり同一化が解かれていく

 

2.

すると仕事をしているときや
食べたり歩いたりしているとき
「とても安全な乗り物」に
乗っているような感覚になってくる

その乗り物には
いつも感心させられるはずだ

車の運転中ならば
ハンドルを回す腕や
周囲を確認する顔を振る動きに
まったく無駄がなく
まさに完璧といえる光景を
目にするようになるからだ

日頃は体は精神に縛り付けられていた
とても重い鎖に巻き付けられていた

だがそれが解かれることで
本来の危険回避の能力が戻る

それはつまり
「全体」との完全な調和が
成されるようになるということだ
流れに必要な動きがそこに起こる

言い換えれば
危険なんてのは最初からどこにもなく
精神が「危険にさせていた」だけなのである

そうして同一化が解かれると
「体が動いている!」ということに
ますます感動を覚えるようになっていく

そしてそのとき
精神における最大のメリットが享受される

それは
「見たいものを見ることができる」
ということだ

 

3.

それはどういうことか

普段あまりに体と精神が
同化しているために
気づいていないのだけども
あなたの動作はいつも不完全なものだ

たとえば
気がかりなことを少し抱えているだけで
それとはまったく無関係であるはずの
コンビニなどでの返答の声が弱くなっている

声が出ない
どれだけ太くはっきりした声を出そうとも
何かがひっかかっている

声もそうだし
歩き方もそうだ
弱々しくぎこちない

また無駄な動作も増えるようになる

愛想笑いや不要な話を
ついついしてしまったり
周囲をごまかすように
キョロキョロしたりと
あなたのその下手くそな操縦のせいで
体は無駄な仕事ばかりとなる

そしてなにより
一番の問題点はこれだ

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