光の世界(前編)

人間が捉えている世界が、いかに「人間が創り出した世界」であるのかを探る手がかりはいくらでもあるが、今回は「目」を題材にしてアプローチしてみよう。

まず視覚について、いくつかの辞典をまとめてみればこのようになる。

「網膜が光の刺激を受けると視細胞に神経興奮が起こり、視神経を通じて脳に伝えられて、脳内で明度や物の形や動き、距離、色などを認識する」

つまり目の奥にある視細胞が光を吸収して、その情報を脳が処理して「像を浮かび上がらせる」という一連のプロセスが「視覚」というわけだ。

ここで大事なのは「視細胞」が受け取るということ、そして脳に伝えられてはじめて明度や色が「認識される」というところにある。

1.

そもそも「光」とはなんだろうか。

漠然と「光」と呼んだりするけども、私たちが光と呼んでいるのは、人間の目が「識別できる範囲」の可視光線のことだ。だから本当は光というのは正しい名称ではない。

つまり光とは電磁波のことであり、人間の視細胞が吸収できる「範囲」をそのように言い換えたものとなる。

電磁波はその名の通りで波の間隔、すなわち波長がある。

コタツなんかの赤外線というのはとても緩やかな波長であり、逆に太陽の紫外線は細かな波長にある。それぞれ赤と紫という言葉が含まれているが、人間が識別できる範囲でいうなら、暖色ほど波長が長く、寒色ほど波長が短いということだ。

虹の色が毎回同じパターンで並ぶのは、波長の長さの順に並んでいるからである。

赤>橙>黄>緑>青>藍>紫 だね。

ただしコタツが赤い色をしているのはフェイクであり、人間が色として見えている光(可視光線)は、赤外線と紫外線の中間の波長となる。だから以下のとおり。

赤外線>可視光線>紫外線

また赤外線は程良い暖かさを体内に生み出して人体に優しいが、紫外線は肌を焼いてしまう。つまり波長が短いほどエネルギーが高く人体に悪影響があるとされる。紫外線のさらに上にはX線やガンマ線があるが、それらを規定以上に浴びると遺伝子に損傷を与え発癌してしまう。

それらはあまりに短い波長であり(10億分の1メートル以下)、簡単に人体を通過していく。レントゲンなんかがその応用となる。

逆に赤外線以下の波長は大きく、ラジオの電波である中波は500メートル、潜水艦の無線などで使われる超長波などは10キロメートルに及ぶほどの大きな波となる。

つまり視細胞が吸収できる電磁波とは可視光線とされる範囲であり、それを赤〜紫の色として脳は認識する。

2.

さてここからが重要だ。

まず光という言葉が「視覚」における電磁波の名称であること、つまり可視光線の範囲のことであるわけだが、そもそも可視光線とは視細胞が刺激として受けられる範囲のことだ。

つまり外に飛び交う光(電磁波)には、そもそも色などついておらず、その視細胞の刺激に応じた脳の反応でしかないということにある。

人体の外には大小の波が飛び交っているだけで、それをキャッチした視細胞を通じて脳が色を塗っているというわけだ。

「そんなことはない。うちのワンちゃんはちゃんと色を見分けている」というかもしれないが、それは色ではなく波長を捉えているのだ。ワンコの脳内でその波がどのように変換されているのかはわからない。

面白くなってきたね。私たちは本当はどんなところにいるのだろうかね。

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