人間という言葉の世界

ハサミは道具だ
物を切るときに使う

ならば言葉も道具だ

自分の思いを
「知ったり」
「伝えたり」
するための道具となる

日本人とアメリカ人が
まったく同じ思いを抱いていても
使う言葉は違うようにね

そうやって私たちは「思い」を
わざわざ言葉に置き換えて受け取るわけだ
つまり常に二重の作用が起きているといえる

どれほどの美しい音色を奏でる笛吹きがいても
笛がなければその美しさを
表すことができないようなものだ

だがその音色が美しいのだろうか?
そうではない
笛吹きのなかにある「何か」が美しいのだ

にもかかわらず笛吹きは笛を取り上げると
なにも表せなくなる
自分自身の美しさについても
知ることができなくなる

たとえば国や時代によって
感情を表す言葉の幅が異なる
極端な話をすれば
2つしか感情表現の言葉がなければ
その国の人は自分の感情を2通りでしか
知ることはできない

つまりその人には
たった2つの感情しかないということだ

彼はその2つから
自分の思いに貼り付けるラベルを
選択しなければならない

それはもっと多くの選択肢を持つ
私たちからすれば
とても狭苦しい印象をうける

だが彼にとってはそれで普通なのだ
なぜなら言葉で表現できる世界が
彼の生きている世界なのであり
そしてまた私たちでさえも
「より豊かな表現を持っている民族」
からすればとても息苦しく見えるのだ
だが私たちはこれで完全だと思っている

だから2つの表現しかない彼にとって
どちらかのパターンしかない
自分の気持ちを知るときもそうであるし
誰かに気持ちを表現するときもそうだ
彼は2つの感情しか知らない

嘘だと思うなら
あなたの感情を紙に書いていくといい
10かな、30かな、
どこかで限界がくるだろう

妙だと思わないかね
「思い」ってそんな機械的なものなのだろうか?
数で分別できるようなものだったかね
もっと豊かで有機的で無段階で
アナログ的なものじゃないのだろうか

そう「言葉」が機械的なのだ

ところが私たちは言葉を通じてでしか
自分の心の状態を知ることができない
つまり限られた道具を使ってでしか
自分にも他者へも
思いを知らせることができないのだ

それぐらい言語というのは
人間の生活に密着して
その人の心理でさえも制御してしまう

またお国柄は関係なく
その人自身が同じ言葉ばかりを
使うようになってもそうだ
かなり狭い世界を生きていくことになる

さて言葉は「思い」そのものではなく
ハサミのように
道具にすぎないということはわかった

ここからが重要だ

あなたがいま思っていることを
教えて欲しい

早く帰りたいとか
暑いとか眠いとか

そのように心で思っていることを
「言葉」として読んでる時点で
すでにそれは
道具をみていることになるわけだ

「切ること」だけがあるのに
ハサミを浮かべているのだといえる

当然「切ること」はハサミのことではない
笛の音色は笛吹きのなかにある何かではない

だがあなたはハサミや音色について
いつも考えている

眠いとか暑いってのはなんだろう?
あなたはなぜそれを読むのだろう?

まるで小説の登場人物に没入するみたいに
本を片手に「なり切っている自分」に
気がつかないだろうか

あなたがこれまで
「自分の気持ち」だと思っていたのは
単なる「日本語」なのだ

つまりあなた自身ではないのだ

「そんなわけがない」
「言葉になる前にイライラしたりする」
「モヤモヤしたりもする」

というかもしれないが
言葉になる前にイライラしてるとか
モヤモヤしているというのは矛盾だ

すでに言語化しているから
そう感じるのであって
すべて「後付け」なのだよ

 

1.

では言葉が道具ならば
「態度」だって表現するための道具だ

誰かが叫んで暴れているとしよう
あなたはそれを見て
「彼は怒っている」と受け取る

だがそれは彼の用いている道具を
見ているにすぎないということだ

彼は「切ること」という意図のために
ハサミを使っているにすぎない
それ以外に意図を表現する方法を
知らないからだ

つまり誰かと口喧嘩をするとき
それは互いにハサミを出し合って
カチャカチャと重ね合わせているだけといえる

もちろん「自分の思い」が何なのかを
知ろうとすれば
その時点でハサミになってしまう

人間は論理的な言葉でしか
自分の気持ちを知ることはできないし
誰かと伝え合うこともできない

だからそれはどうしようもないことだ

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