一緒に歩いたこの道で

ここにあったものがなくなったとき
私たちは奇妙な違和感を感じて
それがやがて悲しみや空しさへとつながる

たとえばあなたが犬を飼っていたなら
一緒によく歩いた道で
いまはもうその子がいないことを不思議に思う

たしかにその子はここにいた

散歩が楽しくてくるりと回転したり
溝や段差を飛び越える姿をいつもみていた

だが道や街路樹や縁石なんかは
変わらずあるというのに
その子だけがいない

たしかにそれは悲しいことではあるけども
しかし実際に悲しみへとつながるには
もう少し複雑な心の過程を経てからにある

それはその道に立ったとき
「この”空間”は同じままでここにあるのになぜ?」
という違和感が処理しきれないからだ

つまり裏を返せば
「その子はまだここにいるけども
たまたま姿がみえないだけ」という
ごく日常的な感覚が当たり前にあるからであり

むしろその子はここにいるのに
「いない」としなければならない
そんな強引な決着をつけようとする
己の頭の働き自体が悲しいんだ

いわゆるペットロスはこのジレンマの間を
行ったり来たりしている様子にある

そして”どちらか”に行き着いたときに
それは克服される

それは「もういないんだ」という
理屈上での納得によるものか

それとも「ちゃんとここにいる」という
感覚上での納得によるものかに分かれる

だが真に克服できるのは”後者”なんだ

 

喪失感の克服

その道を歩くとき
その子がまだここにいるような気がする
リードをぐいぐい引っ張る感触が感じられる

それは手が覚えているのではなく
いま手が実際に感じているんだよ

なぜなら依然として
“空間”は同じままでここにあるからだ

ところが正しく受け取れているその感覚
頭は打ち消そうとする

“理屈”として
その子はいないことになっているのだと
飲み込もうとする

しかしそれだと悲しみは完全には癒えないだろう

そもそもそうして
不本意に納得しようとすることが
悲しみの発端なのだからね

だから動物でなくても
かつての恋人や親しかった人にしてもそうだが

一緒に歩いたその道にいま立っているとき
いったいなにが足りないのだろうかと
問うことが大切なんだ

そうして問うとき
ここにある陽の光や暖かさや
大気に包まれている感覚に気づくけども
「いや待てよ、本当は何に包まれているのか」と
さらに問うことになるだろう

だがそれは
とても安心できるものであるはずだ

あなたと歩くことが楽しくて
あの子がくるりと回転したように

あのときの恋人が
あなたに委ねて手を繋いだようにね

だから今度はあなたが”その道”で
もう一度安らぎをみつけなければならない

彼らの姿を通じてではなく
あなた自身からそれに触れてみること

それができたとき

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