世界が素敵だと感じられるために知っておくべきこと

瞬間的な満たされ感だけで
あとはひたすら心の飢えが続く
どうして何をしても
“不幸”になってしまうのだろうか

これを理解するためには
私たち人類がどのようにして
いまここにいるのかについて
簡単な歴史を知っておく必要がある

数百年前まで
ごく限られた王族や領主を除いて
大部分を占める一般庶民は
ただ大地とともに暮らしていた

いわゆる封建社会というやつで
「まんが日本昔ばなし」のような社会が
世界中にあったわけだ

商人はまだまだ少なく
大半の人々が
農業や牧畜といった仕事をしていた

しかし当時の人々の仕事はいまのように
商品やサービスを”生産”していたわけではなく
必要なものを自然の恵みによって
“受け取ること”が仕事だった

つまり富は
“恩寵によって与えられる”のであって
神(自然)の気まぐれから流れ出ていた

だから人々は
得をしようとするわけでも
損を恐れるわけでもない

そんな所有の観念はなく
ただすべては神の思し召し
己の生死さえも神に委ねられていた

これは決して遠い昔の話ではなく
むしろ現代の産業構造は
何万年という人類史のなかで
たかだか200年ほどしか経過していない

この200年で人口は爆発的に増え
それまで神とされていた自然を支配しはじめた

いまや自然は私たちが豊かになるための
単なる原料庫として
扱われるようになっている

神はお小遣いをくれる親だったが
いまや年老いてボケてしまい
子どもたちは好き勝手に
財布から富を持ち出すようになった

つまり私たちが神となったわけだ

 

1.

自然と共存していた人間は
この自然の世界の上に
第二の世界を作り出していった

それまでは人の手や動物の力によって
富は受け取られていた

つまり自然のエネルギーの享受は
純粋な自然のエネルギーによって獲得され
自然そのものが循環していたといえる

自然は気まぐれだったが
それで調和バランスが取れていたわけだね

だがやがて機械が
その代わりをするようになり
大量生産が実現しはじめる
すると人間の求める富に
自然の気まぐれな恩寵が追いつかなくなる

さらに現代は
核エネルギーがその主力となった
その巨大なパワーは
大地を根こそぎ引き剥がしてしまう

それは恵みを受け取るというより
もはや強奪であり
自然を破壊しているだけでしかない

樹木は切り倒され
大気や海は汚され
動植物の遺伝子は組み替えられた

そうして作られていく「新しい価値」に
人々は個人という名の
自由の感覚を経験するようになる

自分は他人とは違う
自分は幸せになりたい

「人間」と「個人」はまったく違うものだ
人間というのは関係性のことであり
それは自然的なものである

その内側に雲のように現れるのが”個人”となる

よく性差や人種を通じてではなく
人間として相手を捉えなければならない
と語られるとき
それは自然そのものと調和すること示唆している

つまり個人の台頭によって
自然との調和が見失われてきたわけだ

ここが重要となる

日本が全土的に個人性を得たのは
鎖国を解いた明治維新以降だが
西洋では14世紀ごろの
イタリアのルネサンス時代が転機となる

諸説あるけども
最初は王族以外の金持ちたちが
自分の肖像画を画家に
描かせたことが有力とされる

またその絵のなかに
庶民が一緒に描かれたことも大きい

「あ、これは自分だ」という
それまでにない感覚

いままで大勢でひとつだった存在が
そこから特別の光を与えられたような感覚

それが個人のはじまりであり
“自分なり”の工夫や
“自分だけ”の生き方という概念が生まれた

そうした”個人”の出現から
イギリスの産業革命などを経て
この西洋の価値観は地球全域に広まった

「個人」の出現は封建社会の終焉を意味する
つまり神との離別が決定的なものとなったわけだ

それ以後人は「個人の”保持”」のために
果てなき消費を繰り返していくようになる

 

2

ところで私たちの時代は
産業の時代とよばれているが
それは”価値を生産すること“にある

「もともとありもしなかった何か」を
交換しながら社会が成り立っている

そのために長期ローンや通勤ラッシュに
人々は巻き込まれているわけだ

いまや学校に通う目的も将来の設計も
現存する価値形態に規定された通りにある
人生はそのガイドラインに従うことが
不可欠な原則となっている

しかしいったい
何が消費されているというのだろう

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