見えない拘束から抜け出す(後編)

結論に進んでいこう。今回の連載は最初にも話したように、ひとつまえの手記(握り合った手のなかに永遠をみる)とセットで読んでいくとよい。社会ゲーム上で流され続ける「人間」の全貌と成り立ち、そしてその乱反射的に入り組んだ迷宮のような無意識さ(眠り)が、私たちの人生の苦しみの根源であることがより理解できるはずだ。

さてここまで、

「正しい目的によって手段が認められる」
「正当な手段ゆえに目的が維持される」

この2つのパターンがあるといった。

つまり先の大学生ならびに、人々が社会ゲームに携わりながらも苦悩に支配されず、充実した生を生きるには、まず前者の「正しい目的」を掲げることが大事なのだ。

しかし話してきたように、その目的が「犬の尻尾」であってはならない。自他の分離をもとにした「執着」を生きないことにある。つまり「自分の後ろ」にできたものを目的にしてはならないということだ。

ではどうすれば「自分の前」にある目的を捉えることができるのだろうか? そしてなにより「正しい目的」とはなんだろうか?

1.

もうわかっていると思うけども、あなたを困惑させたり苦しめたりする「暴力」とは、あなたが幸福になれたりキラキラした毎日を楽しめたりする「聖なる力」と同じものだ。

だからあなたが反応的、無意識的に生きている限り「力」の主導権はゲームが握ってしまうことになる。

たとえばネット検索してたくさんの人々が写っているような集合写真、見知らぬ誰かの旅行画像でも、芸能人グループでも、飲み会のシーンでも、人が集まってる画像を探してみよう。

みんな笑顔でカメラをみている。ピースサインやポーズをつけている。だが彼らの多くは「空っぽ」なのだ。

彼らは仲間内で交流をしているけども、それは社会ゲームによって生成された「人格」が話をしているのであり、写真に実際に写っている「生身たち」はそのプログラムにこき使われているしかない。

みんなその違和感を感じながら生きている。

2.

しばらく前にビルゲイツが「ソフトウェアがハードウェアに勝った」と宣言した。それはいまやどのような「人格」も「着せ替え可能」になったということだ。そしてそれは社会ゲーム上での「データ化」がより洗練されて「身体がどんどん消失していく」ということでもある。

確かにいまの時代は、あんな自分やこんな自分になれる。

笑いたいなら今夜のバラエティ番組を観てください。涙を流したいなら公開中のこの映画に足を運んでください。この特別仕様の車に乗ればみんなより差がつきますよ。ローンにすれば差額は微々たるものです。

だが着せ替えられる母体である「生身」はじっと耐えるしかない。人格が勝手に生み出した人間関係のストレスに晒され、睡眠薬の乱用や自傷癖にボロボロにされ、常時流し込まれる糖分や化学調味料まみれの食べ物、カフェインやアルコールなどの刺激に臓器はバランスを崩しながらも恒常的であろうと戦い続ける。

3.

確かにその意味ではビルゲイツのいう通り、ソフトウェアは勝利したのだろう。空気のようなありもしない幻想を身にまとうがために「生身」は無理やり笑わされ、無理やり泣かされ、そして支払いのための労働に耐え続けなければならならない。

最近はAmazonが実店舗のコンビニをシアトルにオープンした。そこにはレジや買い物カゴがなく、欲しい商品があればそれを自分のバッグにいれて退店するだけ、すべては持ち歩いているスマホが自動清算する。

またアップルも顔認証だけで精算が済ませられるシステムを準備している。こちらもレジなどは必要ない。ネットショッピングの欠点だった、実際に商品を手にとって買い物をする体験を、また実店舗販売の欠点だった消費者の「迷い」を、同時に払いのけたことになる。

当然「便利な世の中になりました」というCMは浴びせてくるわけだが、資本主義経済の原理からすれば、これがいかに人々にさらなる苦しみを与えるものであるかは明白だといえる。

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  1. gigi より:
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  2. buruku10 より:
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