電気じかけの世界
運命の出会いがないというとき
それは大海原の真ん中に
放り出されたようなものだ
ただひたすら
出会いの奇跡を信じて
待ち続けるしかないし
たとえそれらしき人に出会っても
同じパターンですぐに破局する
何をやってもだめで
どこに向かえばいいのかもわからない
つまりまったく手の打ちようがない
蛍のように
自分を輝かせて待っているだけ
「運命」を信じたいが
そもそも
「誰とも出会わない運命」だったら
どうなんだろう?
それは大変なことだね
待ち続けていたこの人生は
なんだったんだとなる
それじゃ納得いかないからと
だからこうして今日も
出会いを待ち続けているわけだ
1.
少しぐらいの相手の裏切りは
大目に見るようになった
もし問い詰めて相手が離れてしまえば
また自分の人生の価値が
消え去ってしまうからだ
そうなるとまたひとりぼっちになる
自分はこの世に
いなくてもいい存在なんだと思えて
どんどん悲しくなってくる
だけども結局はその寛容さが災いして
相手の身勝手に振り回されて終わる
あとになっていつも後悔するが
実際次の人に出会っても
同じことを繰り返すのではないだろうか
どいつもこいつも
同じようなのばかりじゃないのか
世間に対するそんな苛立ちもある
でもそれじゃ自分が報われないから
次こそはと運命の出会いを待っているわけだ
しかしもし本当に
「誰とも出会わない運命」だったら
どうしよう
そんな不安といつも隣り合わせにいる
しかも自分がそういう
“ハズレくじ”を握っているかは
人生の最後にならなきゃわからない
こんな酷い話はないね
神様は絶対に性格が悪いと思えてくる
2.
中世キリスト教の思想のひとつに
「予定説」というものがあった
自分が死んだ後に
天国へ行けるかどうかは
すでに神に決められていて
でもそれは生きている間はわからない
どんなに善行をしても
だめな人はだめで
たとえ極悪人であっても
神に救済される者は天国へいける
じゃあこの世は
みんな好き放題荒れ果てたのか
どうせ救われるかどうかも
わからないのだから
当然そうなると思うだろう
だがそうではなかった
救われるかどうかわからないからこそ
生きている間の自分はそうであると信じて
人々は禁欲的な生活に励みはじめた
暇があれば少しでも多くの仕事をして
そうして増えた収益も
個人的な快楽に使わずに
仕事のための投資にまわした
自分は神に見放されているかもしれない
だがそれはどうでもよいことだ
己が正しい人間であること
立派に生きること
そうして己の目を覚ましてくれた
神に感謝するべきなのだ
これは資本主義を活性化させた
ひとつの要因ともいわれる
現に彼らはどんどん豊かになっていった
またこうした信条を利用して
資本家たちが都合の良いように
人々を従事させたのではないかともされる
だがそれは別の観点にすぎない
まさに彼ら自身にとって
そんなことは
「どうでもよいこと」なのだ
とはいっても
現代人のあなたにとっては
こんなこと綺麗事にしか聞こえない
大事なのはいま自分に
相思相愛の恋人がいるかどうか
そして自分が幸せかどうかなのだからね
それが”ちゃんと与えられる”なら
中世の武者修行だってやってやるわと
まったく「予定説」の真意を
理解できる様子もない
だけどもいくら待てども「運命」は開かない
いつまで待ち続ければいいのだろうか
やっぱりこのまま終わってしまうのだろうか
これは「出会い」に限ったことではないね
というわけで誰もが大海原の真ん中に
放り出されている状態にあるわけだ
3.
乾電池のプラスとマイナスをつないで
そのコードの途中に豆電球をつける
すると電球は光る
あなたは自分の人生を変えたいとするとき
その電球の光をもっと明るくしたり
違う色味に変えようとしたりしている
電球を明るくするには
電球を違うタイプのものに
取り替えなければならない
つまり「電球交換」こそが
あなたの人生における
すべての努力の全貌といえる
ところがこうして
「どれだけ光らせるか」という
前提に生きている限りは
電球交換にのみに人生が縛られてしまう
これが「運命」というやつとなる
つまり「運命の出会い」は
電球交換の延長線上に
想定されていることになる
だから他人よりも明るく光らせ続けないと
自分は埋もれてしまう
そうして蛍のように
じっと耐え続けなければならない
現実の光景に置き換えてみれば
出会いのために
自分を若く綺麗に見せる努力を続ける
カラコンやつけまつげ
流行のファッション
異性が接近してきたら
今度こそと自分を演出してアピールをする
あなたが男性でも同じことだ
もちろんそれが悪いと言っているのではない
あなたが綺麗で美しいのは
私もうれしい
ただ同じことをやっている限りは
やはり同じ結果になるということだ
なぜなら「運命」に従っているからだ
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