本当の眼をひらく

瞑想がどうして心を解放するのか。また「瞑想的な生き方」がなぜ心や体を回復するだけでなく、人生そのものが素晴らしいものへと変化するのか。

そのような質問がいくつかできているので、いますぐできる実践を交えながらその理解が深められるよう話をいれておくよ。

 

難しいのはあなたのほう

さてそうして瞑想は奇跡を起こしてくれるわけだが、しかしそれはもともとある奇跡にいつの間にか気づかなくなった己を、再びそこに気づかせるだけのことにある。つまり奇跡は奇跡などではなく、あなたがなんの問題も抱えず、安らぎ癒されていることこそが、自然なことなんだ。

だから瞑想が難しいのではなく、むしろ日頃の自分こそがこの大いなる生命の現象を「難しい現実に置き換えている様子」にある。たとえば「これはあのことが原因だからこうなったんだ、だからこうすればきっとこうなるはずだ」みたいなね。

その難しい世界、損得の計算式がずらりと並べられ一箇所でも間違えてはならない、間違えたら最初からやりなおしのような、そんな世界をあなたはみている。

そうやって「己が難しい」ゆえに、シンプルなことが逆に難しくみえてくる。

たとえば時速100キロで走行しているあなたからすれば、静止している樹木が激しい速度で動いているようにみえるようなもの、だからあなた自身が速度をどんどん落として、やがて樹木と同じ静止になったときにはじめて、大きな全体とともに動いていたことにようやく気づくんだ。

それが「瞑想」となる。

 

実践

では実践に入ろうか。

まず目を閉じて、両手を開いて顔や頭を触ってみよう。そしてその感触を確かめてみよう。こうして目を閉じて感触を確かめていると、自分の顔だ、自分の頭だとわかる。当然そうだね。

だがよく観察してみればある奇妙なことに気づく。

それは「空間のなかに」その確かめられている感触があるということだ。

いまいちど目を閉じて手を開いて顔や頭を触れてみよう。そこには感触だけがあるのではなく「空間のなかに」感触があるはずだ。

わかるかい、その感触を存在させている空間があるんだ。この「空間のなかに感触がある」ということに深く浸ってみること。

繰り返しておくよ、「空間のなかで」感触があるわけで、感触だけがあるのではない。この内と外の反転、すなわち意識のシフトこそが瞑想の真髄にある。

 

音は「空間」が聞いている

もし頭や顔や手の感触があなたであるならば「空間のなかにその感触がある」のはおかしいことになるね。あなたは空間ではなく、その感触であるからだ。

だが目を閉じたそこには、日頃自分だと思っていた感触が大きな空間のなかに生じているものだとわかる。

たとえば目を閉じていたら、いろんな方向から音も聞こえてくるだろう。すぐ近くや隣の部屋や、さらには窓の外の遠いところを走る車や電車の音が聞こえるかもしれない。

だが目を閉じているとき、音は耳が聞いているのではないことがわかる。音はまさにその音が”発生しているところ”で聞いているんだ。

もういちど「空間」を感じてみよう。

ならば100メートル先の電車の音を自分の耳が聞きに向かっているのではなく、その音が「鳴っているところ」で空間が聞いていることがわかる。

これは聴力の良し悪しとはまったく無関係だ。聞こえない音は、あなたの空間(この世)にはそもそも存在していないのだからね。犬が捉えている世界は人間とは違う。蝶がみている昼間の光景もまた人間とは違う。同じ人間同士でもまったく違うんだ。

だが(後述するが)あなたの世界にいる他者とはあなたのことであり、つまりあなたは「自らのなか」にひとつの限定した世界をこうして生み出している。

このように音は「それが生じている場所で聞いている」という感覚を得れば、より「空間」を実感できるようになる。

 

なぜこのシンプルさに気づけないのか

ではここで白い紙に自分や自分を取り巻く現実が絵として描かれている様子をイメージしてみようか。

紙の中心に自分の輪郭が鉛筆で描かれ、日頃関わる他人の姿や仕事や家事や、やらなければならないこと、考えなければならないことなどが、同様に鉛筆でその輪郭を描いている。

そうして描かれた輪郭の世界、つまり線に囲まれた世界のなかを、あなたはいつも生きているんだ。そのなかで瞑想してもなんら解放には至らず、そのなかで”真理”をみつけてもそれは役に立たない。

だが消しゴムで鉛筆の線を消し去ってみれば白い紙だけがあったと気づく。つまり「空間」のことだ。

言いかえれば「すべては空間のなかにある」ことを忘れているゆえ、自分の体に閉じ込められているわけで、後述するが、そうして閉じ込められていると心も体もどんどん病んでいくことになる。

しかしこのことは同時に解決を示しているのであって、輪郭に意識を置くのでなく「空間」に意識を置いて毎日を暮らし始めるときに”奇跡”が起こるんだ。

 

世界のほうから実現していく

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