無限の光の河のなかで

生きてると不思議なことがある
思えば妙だったと
これまでに感じたことがあるだろう

でもどうして不思議なのかといえば
それは合理的な考え方を
人間がしてしまうからだ

もちろんそれは人間にとって
ごく当たり前の捉え方であって
合理的にやってるつもりさえない

でも何かに関わるときや
認識するとき
判断しているとき

人は無意識にあれこれを
つなぎ合わせてはじめて
「これはこういうものだ」と捉えている

そんな合理的法則の代表といえば
「因果関係」というのは
その最もたるものといえる

本当は合理的なつながりなんてないのだ
勝手に人間がそうだと思い込んでいるだけ

だからその辻褄が合わないとき
とても不思議な感覚に陥る

それでも人はその不思議さを
合理的に理解しようとして
やはり意味付けてしまう

だが日々の体験のなかには
そんな合理的見解では無理があって
なんだかおかしいということも多いだろう

つまりそういう状況に至ってやっと
それが奇跡だったと感じられるわけだ

本当は何から何まで
全部が奇跡なんだがね

 

1.

たとえばこんな話がある

ある知人の家族がお盆の時期に
遠く離れた故郷へ里帰りしていたときのこと

夫婦と小学生のひとり娘の三人家族は
その故郷の大型施設に訪れていた

そこでは精算前のカートを待機させて
施設内で食事をすることができる

家族が食事を済ませてカートに戻ると
知らないキャップ帽が置かれていた
ちょっとしたブランドのものだった

とにかく混雑していたから
他の客が自分のカートだと間違えたのだ

家族はインフォメーションに
届けようとしたが
娘はその帽子を気に入ってしまい
駄々をこねて
駄々をこねて・・

とうとう持ち帰ってしまった

家に戻った彼女はさっそく洗濯をして
お出かけのときは肌身離さず
いつもその帽子を被るようになった

もはや彼女のトレードマークであり
自分でもとても似合っていると思っていた
だからみんなにいいねと言われることが
嬉しくてたまらなかった

ボーイッシュに被ってみたり
いろんな服に合わせてみたり
鏡のまえで何時間も楽しんでいた

ベッドのうえには
たくさんの洋服が並べられ
部屋はファッションショーの舞台になった

帽子ひとつで「みたことのない自分」が
引き出されていくようだった

 

経緯はどうであれ
わたしのところにやってきたのだ

もし店先で売られていたのなら
貯めたお小遣いを出して買っていた
だから彼女は地元に戻ってすぐ
その「代金」を近所の神社に賽銭してきた

こうした普通でない出会いが
より一層帽子への思い入れを深めさせた

そんな「二人の絆」として
これまたお気に入りだった
スマイルの缶バッチを帽子に取り付けた

 

2.

ところがある日
少女は大事なその帽子をなくしてしまう

家族で車で出かけて
買い物やら食事やらを終えた車内で
ふと帽子がないことに気づいた

車に乗り込んだときに
落としたのかもしれない

出かけ先だったショッピングセンターの
総合案内に電話をして
駐車場に帽子が落ちていないか
また館内で届けがないかを調べてもらったが
出てこなかった

夫婦がいうには娘は
三日三晩泣き喚いていたとのことだ

彼女が何より悔いていたのは
洗濯したばかりで
その日に限ってスマイルのバッチを
外していたことだった

絆の証しだったからだ

だからバッチを外して
お出かけしたことが原因で
自分から去っていったのだと後悔していた

 

3.

さてそれから数日ほどして
その夫婦の奥さんの友人家族を
家に招いたときのこと

その友人家族には中学生の娘がいるんだが
少女はすぐに気がついた
なんとその子があの帽子を
被っているではないか

いやたまたま同じ商品なのかもしれない

だがその被られた帽子の右側の
ツバの付け根の少し上のあたりに
見慣れた穴が二つ空いている

その穴はあまり考えずに
とりあえずバッチをつけて
あとで場所を変えようとしたけども
それじゃ穴だらけになってしまうと気づいて
少しの後悔をしながらも
そこに留めておいた「二人の絆」だった

少女は心臓が破裂しそうだった

どうしていいかわからず
母親にヒソヒソとささやいてみたら
それとなくその友人に聞いてくれた

すると驚くべき返答が返ってきた

その中学生の娘は今年のお盆に
学校のクラブ活動の遠征試合で
偶然にも少女の家族と同じ県内にいたという

だがそのとき自分のキャップ帽を
クラブの親友と交換して
お互いのものを被っていた

ところが地元に帰って学校で解散し
その親友と地元のショッピングセンターの
100円ショップに立ち寄った後で
あれ?とその親友の頭に帽子がないことに気づく

中学生の娘は自分が被っていたのは
親友の帽子だったことを忘れており
そして親友はといえば
その娘が自分の帽子を被っていることを
何度もみていたから特に気にも留めなかった

つまりいつの間にか帽子が消えていた

いつ落としたのか見当がつかない
100円ショップに落し物を尋ねたり
学校や学校からバス会社にも聞いてもらった
また遠征先に寄った大型施設にも電話をしてみた

しかし届けはないということだった

仕方ないと諦めていたところ
数日前に地元の100円ショップから
探されていたというものと
同じと思われる帽子がありますので
みにきてくださいという連絡があったというわけだ

 

4.

もちろん帽子の穴の真相を話して
少女は謝ったわけだが
そこにいた誰もが驚きを隠せなかった

だって盆に里帰りしたところは
ここから3つも県を越えたところだからね

それはまるで
キャップ帽が意志を持っていて
自らの力で持ち主のところへ
帰り着いたみたいだった

あの混み合った大型施設の光景
並べられたカートから
帽子は時空を超えた旅に出た

そしてそのお礼に
少女に幸せの魔法をかけてくれた

神社のお賽銭
みんなにいいねと褒められたこと
鏡のまえで楽しく踊ったこと

生きてることを実感できた
泣きたいほどに嬉しかった日々

少女はそのとき後ろポケットのなかで
何かを握っていることに気づいて
その手を開いてみたら
缶バッチが微笑んでいたという

みんなでどっと笑ったらしい

 

5.

さてあなたは気づいているだろうか

生きてればすべてが通り過ぎていく
いまここにそれはあっても
いつかは離れ離れになっていく

だけどもほら
周りをみてごらん

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