青空に鐘の余韻が響きわたる

久しく訪れた友人の墓石には
南無阿弥陀仏とだけ刻まれている

その刻まれた言葉を前に
私は腰を下ろして
手を合わせている

周囲の音から切り離されて
時間が静止する

私の前にはただ静かに
南無阿弥陀仏だけがある

 

1.

思えば随分と死んだものだ

父親も死んだし
古い親族のほとんどが死んだ

仕事でよくしてくれた人も死んだ
駆け出しの頃の私を
散々苦しめていた人たちも死んだ

笑顔で挨拶を交わしていたご近所も
毎年誰かが死んでいく
親しかった友人たちも
葬儀の知らせが度々届けられる

中学の頃に淡い想いをした女の子も
去年死んだと聞いた
優しい声の綺麗な子だった

みんな消えていなくなった

身近な人がはじめて死んだとき
いったい彼はどこへ行ったのだろうと
不思議で仕方がなかった

死ぬとはもう二度と会えないことだと
母から言われたが
子供の私はそれがどうしても
腑に落ちなかった

いったい誰がいなくなったというのだろう

空気のなかにふっと現れて
しばしの時間を私と過ごして
そしてまた空気のなかに溶けていく

母の言葉が腑に落ちなかったのは
その空気はいまもここで
私を包んでいるからだ

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