地図にない場所をみつける
いまあなたが見えている現実は100パーセントなのかといえば、そうだ。それ以下でも以上でもない。だがそれはどういうことだろう。
ところで最近は自動運転車(運転手なしで走行する無人運転車)のニュースを目にするようになってきたが、そうしてクローズアップされると、そもそも車というものがどういうものであるかが浮き彫りになってくる。
たとえば車はとても欲張りな存在だといえる。まず駐車スペースがいくつも必要となる。自宅もそうだが、出かけた先にも必ず必要だ。ショッピングモールなどの施設が、売り場以上に駐車スペースが大きいことは誰もが知っているだろう。職場もそうであるし、路上パーキングもそうだし、どこにいっても駐車場は必要になる。
しかも車を移動させたそこは空になる。この贅沢極まりない「土地の浪費家」が世界全土に存在するわけだ。
1.
また社会学者のジョンマイヤーらの著作である「都市交通の分析」によれば、車は走行しているよりも「駐車しているときのほうが数倍のスペースを取っている」という調査結果を出した。それは空間面積だけではなく、時間面積という考え方に基づいている。
大多数を占めるごく一般的に利用されている自家用車の運転時間は、年間から平均を割り出せば、実に1日1時間程度におさまる。つまり23時間はどこかの駐車場で時間面積を消費しているということだ。運転時の移動面積と、時間換算した占有面積を比較すれば、明らかに駐車しているときのほうが土地を支配しているというわけである。
つまりそれを国土という観点からみた場合に、駐車場というのは車には絶対要件であるのだけども、それら駐車スペースを「同時に利用すること」はできず(自宅と職場のどちらかだけ)、常にかなりの無駄を生み出していることになる。
もちろん都市によって駐車場の面積の割合は違う。ロサンゼルスやメルボルンなどの比較的新しい都市の場合、都市全体の面積の8割近くを駐車場が占めている。また東京は新しい街だが建物が過密しており、全体からみれば駐車スペースは数パーセント程度しかない。だが車を持つ人々は郊外に家を建てていたりするので、都内だけに話を収めることはできない。
よって自動運転車(無人運転車)というのは、車を自己保有して、無駄に土地を占有していることから解放し、また無人車同士や管制局との相互のコミュニケーションによって、自動車事故を最大限に防ぐことができるというわけだ。
2.
さてどうしてこんな話をしたのかというと、実際に自動運転車が始まりだすと、上にあげたメリットとは逆に、いわゆるフィルターバブルという現象が起きる可能性が危ぶまれているからだ。
フィルターバブルというのは、たとえばあなたがインターネットで検索をするとき、まず必ずバイアスがかかっている状態にある。
仮に「炭水化物は体に悪いはずだ」と思って、炭水化物について検索してみれば様々な結果がならぶわけだが、そこからあなたが選ぶのはもちろん「炭水化物は体に悪い」という情報となる。
次の段階として、そうして「炭水化物は体に悪い」というページばかりが選ばれるようになると、グーグルなどのサーチエンジンはそれを学習し「炭水化物は体に悪い」という情報を優先して表示するになる。インターネットビジネスをやっている企業ならばそれに便乗したりして、一般に開示されるべき情報の偏りにますます拍車がかかるわけだ。
結果として「それ以外の情報」がフィルターで閉ざされ、画一的な思想に人々は染められることになる。つまり「炭水化物は体に悪い」が常識となる。どう調べてみても「そのようにしか書いていない」のだからね。
実際人間の価値観や思考というのは、歴史を通じてこのようなフィルターバブルが続いてきた。インターネット時代には単にそれが急速化したにすぎないのである。
だがこれは「みんなはこう言っているけども自分は違うと思う」という意思を持てばいいという話では済まされない。なぜなら「みんなと自分は違う」というとき、それは相対的な発想でしかないからだ。
つまり「自分は違う」という意思そのものがすでにフィルターがかかっているというわけだ。
3.
自動運転車の無人活動には、サーチエンジンと同じ原理が組み込まれている。すべてはデータの収集にあり、その収集がどのように利用されているかの結果によってアルゴリズム(処理手順)ができる。
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