祝祭のオーケストラ

ピアノやギターのように和音が鳴らせる楽器がある。いくつかの音を同時に重ねて鳴らせるわけだね。

だがなんでも重ねたらいいというわけではなく、調和した重なりかたがあってこそ「協和音」であり、不調和なものは「不協和音」と呼ばれる。

少しだけ細かい話をしておけば、音というのは振動によって生まれるのであって、いわばウネウネした波にある。

それが別の波と綺麗に混ざるとき(理論的にいえば整数比であるほど)”私たちの耳”には心地よく安定したものとして響く。

ここではとりあえずそれが協和音だということにしておこう。というのは、こうした西洋的な理論が全世界の民族音楽に普遍というわけではなく、あくまで今回の手記の”材料”として用いるからにある。

協和音は音階でいえば4つ上とか、5つ上などが代表的だが、ここで頭にいれておいてほしいのは、たとえば3つ上や7つ上の音を重ねて、それが物悲しい響きになったとしても、それは不協和音ではなく協和音だということだ。

不協和音というのは、不調和で違和感があり、そこにはなんの救いもないような落ち着きのない不安定な感じにある。

 

“毎日”は音楽そのもの

さてこの協和音と不協和音をあなたの毎日に置き換えてみれば、たとえば美味しいものを味わったときは協和音が響いているといえる。だから不味いものは不協和音だね。

親切にされて嬉しかったときは、ジャーンと協和音で、嫌な思いや惨めな思いをしたときは、ガーンと不協和音。

安らぎや癒されているときは協和音、気分が盛り上がってるときも協和音。それらの真逆であるなら、それは不協和音が「いまここ」で響いている。

チームワークを感じているとき、家族愛や友情を感じているときも協和音として調和してるわけだが、その観点からいえば、バラバラだったものが「ひとつ」になったようなときこそ協和音=調和しているのであって、つまり融合にある。

逆に宇宙から放り出されたような孤立した別離は不調和であり、不協和音が鳴り響く。

気のあう友達、いまいちあわない知人、良い出来事、悪い出来事、やる気の出てくる時間帯、なにをしてもまとまらない時間帯。それらは”和音”の調和か不調和かにあるわけだ。

 

安定という”檻”

さらにいえば、凍えた屋外から家に帰ってきて、暖かいシャワーを浴びてほっとしたとき、それは不協和音から協和音に移行したといえる。

実際音楽でも、不協和音があえて効果的に使われるときといえば「協和音へ移行したい」と強い欲求を楽曲のなかに生み出したいときだ。死から生気を持って蘇るみたいにね。

そう考えてみれば、不幸な私たちが幸せになりたいと願うのもやはり同じ作用であり、分離から統合に移行したいという欲求なのだとわかる。

また人工食品の過剰摂取や日照や運動不足などで病気や疾患を患ってしまうのもまた、本来調和しているひとつの生命から外れてしまったからであり、その観点からみれば、調和とは、己の魂が”全体からみてどの場所に留まっているか”の問題だともいえる。

たとえばピアノでCメジャー(ドミソの明るい和音)を弾いたとき、そのなかの音の1つが別のムードを放ちだすと、いまここに響いていたはずの協和音は崩れて不調和になるようなものだ。

社内や家庭などでの”わがままな自分”の振る舞いでみえば、なんとなくイメージできるだろうけども、それは環境だけでなく人生という全体における”現在”としてもそう、人生そのものと調和しているか、そうでないか。

ゆえに“個”のほうからより大きな全体へと合わせていくというあり方が基本的には大事だけども、しかしその”同調”は常に明るい協和音だけでなく、暗い協和音(Cマイナー)としても響くことも忘れてはならない。日本の社会にはおなじみの悪い意味での同調だね。

SNSにしてもそこに浸りきってしまえば、それもまたひとつの調和としてあなたは界隈の顔となるけども、その同調的なウネリがあまりに強固でそこから抜け出せなくなる。

ぬるま湯に浸かっていると、”安心”してしまうようにね。

 

引き寄せの原理

まあこんな感じで、和音ハーモニーというのは人生の光景にそのまま置き換えることができるわけで、こうした”見方”もまた、あなたがこの世を捉え直すひとつの眼差しとなるというわけだ。

木漏れ日や公園のベンチ、通り過ぎる人々、オーケストラのように毎日を感じてみれば、これまで何でもなかったものがきっと大切に思えてくる。

そうして大切に思えるからこそ、すべての個々は相互との関係においてその良し悪しを与えられているのだとわかるようになる。関係性からではない「ありのままの何か」をそこに垣間見るからだ。

そしてもうひとつ重要なことがある。

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