声なき残響

近くに幼稚園があるのだけども
窓には動物や花などの装飾がされている

クマやウサギが笑顔で手を繋ぎ
花や星に囲まれている

もちろん先生が
園児たちのために貼り付けたものだ

それを見ていると
「こっちのほうが可愛いかな」
「やっぱりこうかな」
そんな作業中の想いが伝わってくる

この「想い」という形なきもの
それがこの世を彩っているのである

街を歩いて観察してみるといい

民家の玄関に飾られた花壇から
傘立ての配置まで
その家のひとが考えて
それはそうして置かれている

観るべきなのはそこに何があるか
ということじゃなく
かつてそこに人がいて
そしてその人の考えがあったということだ

その想いの痕跡を感じるとき
もうその人は過ぎ去った後となる
決して想いの前に立つことはできない

あなたがこれを読んでいるときには
私はもうここにはいないのだ

だからこの世とは
声なき残響のようなものといえる
響きだけがあるけども
発せられた最初の声はもうそこにはない

 

1.

仕事で地方に出向いたとき
廃墟の学校などを見つけたら
車を停めてしばらく眺めることがある

心を澄ませてみれば
以前そこにいた生徒たちの
賑わう声が聴こえてくる

そのままにされた物の位置や
窓の開き具合

壁の傷

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