真理とはなにか

人間はその時代に影響される。そのものとなってしまう。たとえばあなたが「良いこと」だと思っていることでさえも、それは生きてる環境や時代が「良い」としていることであり、あなたの決定ではない。

つまり人間は何色にでも染まってしまう薄紙であるといえる。あってないようなものだ。

世界各地に点在する過激派組織は、私たちからすればとんでもない姿に映るが「真理」というのは生きている社会や時代が生み出すものであり、彼らはそれに動かされているだけであるということだ。

それは私たちも同じ。

「良い・悪い」「幸せ・不幸」「快・不快」などといった「真理」は、この現代の日本という国で生まれ育ったから持ち得ているものであり、その「真理」のなかで私たちは幸福を目指しているだけにすぎない。

「生きていかなければならない」という考えですらも時代の刷り込みであるのだ。あなたの「YES・NO」をよくチェックしてみるといい。その基準をなぜ頑なに信じているのかとね。

だから時代が変わればあらゆる基準がかわる。それもなんの違和感もなく「ごく当たり前のこと」として、あなたは平気で「悪事」をしていることになる。

2.母の視点

これはなかなか理解しにくい話だろう。なぜならあなたは「いまの真理」のなかで、この話を理解しようとしているからだ。

自由意志の話に置き換えるとわかりやすい。

「自由意志はあるのかないのか」という考えが思いついている時点で、それはすでに時代の考えを「話させられているだけ」であり、その結論が「自由はある」に至ったところで不自由のなかにいるということだ。

だがそうして「不自由のなかにいること」を知っていることが「自由の到達」であり、その様子こそが自由意志にあるということなのだよ。

「嘘つきの原理」もよい喩えとなる。

嘘つきはあることを誤魔化すために嘘をつくわけだが、嘘をつくその行為はその「あること」を前提にしなければならないからだ。

反抗期の少年が母親に何かの嘘をついたとしよう。

彼は「まったく隙のない完璧な説明ができた」とにんまりする。確かにそれは完璧な説明だった。どこにも隙はない。

だが母親は見抜いてしまう。なぜなら反抗期の彼は普段まともに返事すらしないのに「そのこと」についてはとても詳細に話しているからだ。それは彼の盲点であり、彼自身が弁明しようという状態にある以上、そのパラドックスに気付くことができない。

だから少年が考えを凝らせて完璧であるほど、墓穴を掘るかたちとなる。つまり母親は少年の世界よりも高次から見下ろしているといえる。

罪の外側に愛がある

要点を逃してはならないよ。

これを読んで「じゃあ少年が本当のことを必死で話しているときはどうなの?」と受け取るかもしれない。そういう疑問が浮かぶ時点であなたは少年と同じ真理の世界にいる。

いいかい、この話での「母親」とは上位次元の象徴である。

つまり罪を感じているのは少年だけであり、母親は「どちらでもいい」のだよ。だが少年は観念のなかに埋もれているゆえに、母親のどんな態度に対しても「ばれた」「ばれてない」「ほんとうのことなのに」「なんでわかってくれないのか」という振り子に揺られ続けてしまう。

仮に母親も少年と同じベクトルにあるならば、少年の嘘を追求するだろうし、逆に「信じてあげなきゃ」という考えに至るかもしれない。だがどちらを選択しても同じことだ。少年と母親は巨大な振り子に揺られ続けることになる。

母が高次にあるとき、その愛のまなざしは「少年がこだわっていること」の外側から包み込んでいるということだ。だから抱きしめられるのだよ。

目は様々なものを視ることができるが、唯一の盲点がある。目そのものを視ることができないということだ。それは少年も同じ。彼は目の前の物事を入念にチェックできるが、チェックしている自分自身が「そこに含まれていること」に気付くことができないのだ。

だから自分自身を愛するとき、あなたはその外へ出なければならない。外というのは外の世界のことではなく、あなたの内側に向かうということだ。(あなたはいつも外の世界にいるからね。外の外、そこじゃない場所)つまり執着を放棄した次元へジャンプする必要がある。

3.不幸はなぜ起こる?

さて過激派にしろ少年にしろ、それぞれが「真理」のもとに活動をし、そのなかで最善を目指そうとしている。これが本書がよく暗喩する「野球」のことだ。

ある観念のなかにいる以上、あらゆる努力はその観念の枠のなかで満たされるだけでしかない。逆に言えば、努力をするほど観念をより強めるということになる。

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