人間を知る(1)

人間として生まれてきた以上
他人の存在は常にトラブルとなる

「なぜ平気であんなことができるのか」
いつもそう感じているだろう

今回は「人間」についての洞察と
そしてどうすれば
この他者であふれた世界で
人生を豊かで満たされたものにできるのかを

原理的な自然界と
社会という神話世界の
両面から話を進めていこう

 

1.リアルな世界と神話の世界

過酷な大自然のなかにある
野生の動物や植物の世界
虫や微生物の生存競争

どれもハードにみえる

だが人間も例外ではない
他の生物と同様に
起源は同じ細胞の集まりであるからだ

地球の自然循環という本能を
細胞はプログラムされている

根源にあるのは自己保存の本能ゆえ
道徳的な頭を取っ払えば
誰もが我が身のため他者を食らう

そのため人類は社会を形成してきた

奪い合いや殺し合いを防ぐため
心のなかに「神話」を植え付けた

悪いことをしたらバチがあたる「宗教」
雄と雌がソフトに絡み合える「恋愛」
ルールの中で奪い合える「経済」
違反者には刑罰をするという「法律」

そうした神話を基礎にして
社会というものを築いてきた

もし社会がなければ
人間は野生の動物と変わらない

殺人や強奪、強姦の世界だ

だがこうした「非道さ」は
私たちが社会的な枠組みのなかから
それを見るから浮かぶのである

物質としてはその世界こそがリアルなのだ
それをまずは理解しておこう

 

2.本能

街、職場、学校などで
人間性が欠落したような人がいる

あなたは彼をみて
「きっといつかはわかってくれる」
そう思うかもしれない

だがそれは期待しないことだ

彼が人間性を獲得するには
人類が歩んできた
同じステップが必要だからだ

己を突き動かす本能を抑制し
自らその努力に耐え忍ばなければ
彼はあなたの眼鏡に叶う「人格者」にはならない

つまり彼は本能のままに
なんの意識的な取り扱いもせずに
生きている

ゆえに人道的に映らない
だが彼もそれをわかっている

ちくちくと嫌なことを言ってみたり
自分のために人を貶めたり
わかっているけどもやめられない

悪になりきるとスッとする
でもあとで罪悪感に悩まされる
なんでもないときでさえも
理由のわからない後ろめたさに
包まれるようになる

その板挟みのギャップが
彼のなかで苦しみの傷を刻み続け
それゆえにまたどこか吐き出そうとする

その姿はもはや創造的な人間ではなく
発生しているだけのカビなどと変わらない

ただカビよりもタチが悪いのは
苦しむ心を持っているということだ
よって彼の人生は「苦しむためのもの」でしかない

そしてまたそんな彼の姿を
「社会的な目」で見ている
自分にも気づかなければならない

あなたのほうが
優れているという話ではない

意識という「制御」をしなければ
人間は苦しみだけを抱えて
どこまでも堕ちていく

それはあなたも同様であり
己の無意識性を管理してなければ
その「社会的な目」で
自己保存の本能に駆られているにすぎない

つまりその目で他者を喰っている

彼を批判するとき
あなたは彼となにも変わらず
並んで発生しているにすぎないのだ

 

3.ホリスティック

私たちは常に無意識に晒されている
それは地球からピピピと送られてくる
「生物的な活動情報」のことである

生物としてみれば
「人間とそれ以外」といった境界はなく
すべてが地続きでつながっている

たとえば私たちは動物の世界について
とても過酷に感じるけども
彼らは食って食われるその世界で
「ひとつ」なのだ

本能的に逃げ回ったりしているが
それは種族の繁栄のためというよりも
互いに食べあうためである

つまり自分を食べる相手への
「総量」を保つために繁殖するのであり
そのストックを切らさないために
各種の本能がある

自然界の需給のバランスを
保つために生存本能があるのだ

人間社会の経済もそうであるし
未開民族での
「クラ交換(部族の宝物の交換)」という風習も
社会的に踏襲したものであるといえる

消費や婚姻なんてのは
交換のシステムの代表的なものだ
自然の摂理を社会という神話上で
表現しているにすぎない

だから動物界をみて
「天敵」だとか「逃げる」とか
そういうものは人間的な見解でしかない
彼らは己自身を「最適な数量」で
交換し続けているのだ

食べ物や水、空気、天候、大地などに
「仲介性」をみるとき
ひとつの巨大な有機体の姿が浮かぶ

数十兆といわれる人間の肉体の細胞は
全体との関わりのなかで
常に情報をやりとりしている
つまり「交換」を続けている

人間が思考世界に夢中になって
気づいていないだけで
体は完全に自然と同化しているのだ

その伝搬される情報は
危険の察知や集合的無意識、
シンクロニシティなどの情報も含まれる

だから瞑想などで思考の曇りを落とせば
動物的な直感力が冴えてくるのだ

そしてそのホリスティックな理解への
浸透とともに
自然のレベルでは時間の経過などなく
また「生や死もない」ことがわかる

共時的な集合要素が
ぐるぐるとサイクルしているだけだと
感じるようになる

 

4.無意識のトレード

だがその無意図な円環が
人間の視点からは「暴力的な光景」
として捉えられてしまう

なぜなら社会とは
「全体というひとつ」の存在ではなく
「個人の集まり」であるからだ

つまり無意識とは自然現象そのものであり
その「全体的な支援活動」は
人間の信念や理性などは考慮されていない
社会生活からみればテロ行為でしかない

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