贅沢に生きるということ

ポジティブな気分と
ネガティブな気分があるけども
その違いが何であるか気づいているだろうか

辛いときにその辛さから逃れようとしても
なかなか離れられないのはなぜか

それは両者の違いを理解していないからだ
辛い時にどれだけ処方薬を塗りこんだところで
永遠の晴天はやってこない

 

たとえば自由というのは
「どうやって手に入る」のだろう?

手に入れなければならない自由とは
なんだが矛盾しているね

自由それ自体が不自由でしかない

「自由な感覚」というのは誰もが
なんとなく知っている
でもいざそれを「実現しよう」とすれば
結構難しいことに気づくものだ

自由を感じようとして
仕事とプライベートの境界線を引いたり
つまり朝の時間を有効に使おうと
早起きを鉄則としてみたりしても

早起きをした最初の何回かは
いつもと違う時間の世界を感じられて
「ああ自由だ」と思ったところで
しばらくやってみると
今度はそれ自体が拘束でしかなくなってくる

最初に感じた何かが消えてしまう

すると今度は
変に早起きをするよりも
ギリギリまで寝ていられる方が
「自由だ」と感じられるようになる

つまり追えばそれは逃げていくが
追わずしたときに「それ」はそこにある

かといってだらだらした朝を続けていると
自由の喜びなどありもせず
また不自由の檻に閉じ込められたように
はまりこんでいく

ではどうやったら
ずっと自由でいられるのか

現代人は「自由」を勘違いしていて
それはたまにやってくる休暇のことや
お金を払って享受できるような商品だと
思ってしまっている

だから「それを手にしていない日頃の状態」が
とても苦しいものとなるわけだが
とはいっても上の話のように
何を手にしたところで自由にはなれない

このように自由が不可能に思えるのは
根本的な何かを勘違いしているからに
他ならないからである

 

1.

まず理解しなければならないのは
自由とは「欲求を満たすものではない」
ということにある

自由と幸福と精霊は同じものだ
捕まえておこうとすれば
すぐにそれは消えてしまう

じゃあどうすればいつも精霊たちが
そばにいてくれるのだろう

それは真逆のアプローチによって可能となる

つまり自由とは欲求を「満たすこと」ではなく
欲求を「除去すること」で得られるということだ

わかりやすい例として
たとえば飲酒はその時はよいけども
肝機能の処理の過程で
大量のトリプトファンが失われる

それは翌日のセロトニンの生成に
多大な影響を与える
セロトニンは幸福ホルモンと呼ばれるもので
精神の安定に深く関わっている物質となる

つまり日頃のストレスを解消したくて
毎晩酒に浸っているとする
だが酒を飲み続ける限り
日頃の世界はとても重くなっていく

だから酒を完全に断つことで
逆説的に日頃の世界は軽くなっていく

解放されようとしていたことが
裏目に出ていたということだ

 

自由や幸福もすべてこれと
同じ原理にある
もちろんすべてに「セロトニンが」
ということではない

そうではなくて私たちは
もともと満たされている」のであって
それに気づいていなければ
何を積み上げようとも
不安定なものとなるということだ

物質で満たされた世界に生きる現代人は
そのことを忘れている

何かを求め得ることではじめて
自分は満たされると考えている

だが何かを求めることによって
もともとの安堵を見失っていること
気づかねばならない

だから「本当に自由な人」は
別に時間を持て余しているわけではない

みんなと同じように時間のなかを生きている

朝起きて働いてお昼を食べて
夜は風呂に入って就寝する
月末には給料をもらって支払いをする

それでも「自由な人」はとても自由なのだ

何が違うのかといえば
欲求で自由になろうとしていないこと
むしろ度々起こる欲求を
自律的に払い除けていることにある

大半の人々が間違えているのは
「不足を補うことで贅沢をしよう」と
していることにある

だが自律した精神によって
不足を作らないことが
これ以上ない「本当の贅沢」なのである

あらゆるすべてが
最初からここにあることに気づくからだ

 

2.

妻の知人がいて
「誰々の展覧会へ行ってきた」
「とても良かった」と
いつも伝えてくれるのだけども

彼女の話を聞いているとき
いつも奇妙に感じるのは
彼女自身が楽しんでいるように見えないことだ

つまり彼女の語りは
自分の観た絵の素晴らしさではなく
その絵を観てきた自分を見て欲しいという
思いが込められている

一緒に美術館にも行ったことがあるが
「ほら私はこんなに絵に没頭してますよ」と
私たちに訴えかけているようにみえる

彼女は美術フリークだ
もちろん芸術家については詳しい

美術館や展覧会へ行くことが趣味であり
アートに触れることで癒され
そして新しい感性が湧いてくると
知り合う人々に「言い歩いて」いる

だけども彼女の日頃はいつも
殺伐としている

彼女は小さな会社のオーナーであるけども
事務所の従業員からかかってくる電話に
いつも怒号を浴びせている

それもまるで
周囲に見せつけているかのようだ

そんな彼女にとって
まさに彼女が言うように
「芸術は心のオアシス」なんだろう

しかし何かが見過ごされている
それは彼女が自由ではないからだ

自ら作り出している鎖に気づかず
それに縛られ続けている

もし彼女に話す友人がおらず
ひとりきりならば
本当に美術館へ足を運ぶのだろうか

もしそうであるならば
そのとき彼女は真に芸術の虜になるのだろう

芸術から「本当のこと」を
教えてもらえるのだろう

彼女のようなタイプはどこにでもいる
物やサービスが溢れた世界に生きる
現代人特有の病だといえる

つまり現代流の「間違い」が
真の意味での自由を逃してしまう
つまりどこまで求め得ても苦しいままとなる

もちろん打ち込めるものがあるのは良いことだ
しかしそれは閉じ込められた世界から
抜け出すためのジャンプ台とするものであり
それ自体に己の魂が閉じ込められないように
気をつけなければならないのである

恋なんかも同じだね

その相手の存在によって
あなたは輝くのだけども
それはあなたのハートが開いたからであって
その相手の力ではないのだ

 

3.

さてこの話はそのまま
「幸福」に置き換えることができる

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