詩とメロディ

ある外国語で歌われる曲があるとしよう

美しいメロディに
現地の言葉による歌詞が乗っている

歌詞はどんな意味だろうかと
日本語に翻訳してみて
「ああ、失恋のことを歌ってるんだ」とわかる

恋人とはじめて会った日のことや
雨の日の素晴らしさを語り合ったこと
やがてすれ違いが増えてきたこと

まるでメモ紙に書いた
何気ない落書きのようにその人は現れ

そしてその落書きが消えたみたいに
その人は虚空にみえなくなった

自分以外のところへ
行ってしまったのではない

水滴が湖面に消えていくように
なにか大きなもののなかに溶け去った

だから寂しいのとは違う

なぜなら恋人は
私の宇宙のなかで現れ
私の宇宙のなかで消えたのだから

 

まあそんな歌詞なんだけども
ところが歌が2番3番と繰り返すうちに
奇妙なことが語られはじめる

 

たぶんこれから何度も
恋人のことを思い出すだろう

だが思い出すのは
もはや詩の翻訳としてのその人ではなくて
詩が乗っていたメロディそのものだろう

メロディは翻訳の必要がない
ダイレクトにこの宇宙を感じられる

はじめからそうあればよかったのだ

ならばあの人の姿が
消えてしまったことへの感傷ではなく

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