鏡に映る偽りの自分
もらいあくびがあるね。親しい人が目の前であくびをし始めた途端、あなたもあくびをする。それは無意識的なものだ。意識的にあくびをすることはできない。
それにも関わらず、どうしてあくびが伝染するのか。
現在それはミラーニューロンと名付けられた脳内反応によって起こる説、社会的共感説などいろんな仮説があり、だがこの数十年の研究でもまだはっきりしたことはわかっていない。
だからどの説も不完全だが、今回はミラーニューロン説をベースに進めてみよう。というのは「もらいあくび」は話のきっかけであって、主旨は別のところにあるからだ。
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いつも話しているようにニューロンとは脳内の神経細胞のことであり、その動きによって、私たちは物を認識したり体を動かしたり、思考や記憶を引き出したりする。
そして「ミラー」というからには鏡の原理であることは察しがつくだろう。
どういうことかといえば、目の前の誰かの行為を目にしたとき、たとえばその人が怪我をした瞬間をみたとき、自分の頭のなかでも「痛い」という領域が活性化するということだ。自分のことでないのに目を覆ったり、痛々しいしかめっ面をしたりする。実際にその痛さを感じたりするかもしれない。
緊張している人をみたとき、こちらにもその鼓動が伝わってくる。泣いている人をみると、こちらも悲しくなる。おいしそうに何かを食べている人を見ると、自分も何かを食べたくなる。
誰かに微笑んでもらえれば、嬉しい気持ちになる。好きな相手ができたら、その人の仕草や口癖を”自然と”模倣するようになる。
2
だがこれらは「あくび」と同じで、知らずのうちに自ら起こしている（ここを注意しておく必要がある）。
こうした自分の無意識な行為に気が付いたときはもう遅い。すでにそれをしている。無意識は意識よりも数歩も早くコピーを開始するからだ。
つまり人間世界で暮らすということは、それは互いにコピーをしあうという関係にあるといえる。「無意識」にね。相手の影響が潜在意識に刻まれ、そして今度はそれが己の言動に現れてくる。ミラーニューロン説で語れば、「人の間」と書いて人間と呼ばれるのはそういう意味となる。
より高次な観点で捉え直してみれば、そのコピーの連鎖とは個人を超えた連続性が垣間みえているのであり、すなわち、”人間としての私たち”の実体が「言葉という一者である」ことを明かしていることになる。
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だがミラーニューロンの原理を土台にして洞察してみるとき、私たちには常に”ある危険”が潜んでいることがみえてくる。
Notes あなたの正体, マインド, 不幸をやめる, 存在, 心, 観念
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