現実変更と恋愛と信じること(前編)
信念が現実をつくっている、そう聞いたことがあるかもしれない。
実際そうであるのだけども「信念とはなんだ」ということを理解しておかなければ、現実を理解することはおろか、新しい世界を開いていくことさえもできない。
今回は人々が陥っている様々な誤解(恋愛など)を交えながら、現実そのものを作り出している「信念」について話を進めていこう。
1.
よく信念とは「思い込み」のことだと表現される。では思い込みとは何かといえば「信じていること」にあたる。
ただしここで肝要なのは、ある何ががそこにあって「それを信じる」ということではないということだ。ここを取り違えていると、目の前にあるガラス玉を「これはダイヤモンドだ」と思い込んでいれば変わると期待をし続けることになる。
だがその期待はすでに信じられているなかで望まれているものであり、そもそもの土台を変えなければ、期待するための現実(つまり満たされない現実)だけが現れ続けることになる。
対人関係でもそうであるし将来設計についてもそう。そこにあるものは、何をどう思い込んでも、それはそれなのだ。
2.
では、すでにそこにあるものが「どのように思い込んでも変わらない」のならば、現実を変えることはできないということなのだろうか。よくいわれる「見方を変えれば別のものが見えてくる」というのはどういうことなのだろうか。
そのような難問に取り憑かれることになる。
いくら高尚なヒントを得たところで、それさえも「水面下」に沈められ、つまり言葉の意味に振り回されて、その言葉の解決を求め、そしてそれが得られずに苦しみもがいてしまう。
そうして「答えなどない」という真意を取り違える。その場合、確かに「答えなどないその通りの世界」を生きていくしかないことになるだろう。
だがそれは根本的な部分を逃しているからなのだ。いわば、信念が現実をつくっているという「事実」を「信じよう」としているにすぎない。これはこのように言い換えたほうがわかりやすいかもしれないね。あなたの「信じられない」ということも、信じられないということを信じているのである。
つまり己が信じていることだけで埋め尽くされているのだ。よって望みでない現実を生きているならば「そもそもの思い込み」にいかに気づいて、そしてその気づきによって「水面上」に飛び出さなければならないのである。
そうでなければ私の言っていることは何の役にも立たない。
3.
だから信念(思い込み)についての理解を広げる必要がある。信念で現実が変わるというのは「すでに存在するもの」を別の何かに変えようと思い込むことではないのだ。
誰もが絶対的な安心にすがり付きたいと思っている。それは「確実な根拠や証拠」があることを前提としている。そうであってはじめて「信じられる」という気持ちになる。
実績があって信頼のおける人々、こつこつ貯めた貯金の数字、勤めている会社の将来性、そうした「信じられること」に値する証拠や、または科学的な立証を得なければ信じられない、ということだ。
だがそうしたものは、実際は自分自身から「それを信じることにした」からそうあるのだ。証拠や確証というものですら、それ自体を自分が信じているから「信じる根拠」としての証拠や確証となっているのである。
4.
たとえばあるアーティストのことが気に入って彼の作品を買い集め、毎日が豊かで満たされているとしよう。検索して出てくる彼のファンもあなたと同じように満たされている。そうして「自分は間違えていない」という裏付け、すなわち証拠や確証がそこに出揃う。
だがある日、彼をバッシングする意見をみかける。するとあなたのなかで何かが揺らぎはじめる。そうなると「その傾いた視線」で物事を見るようになる。検索する語句や、また好意的なファンに対しても疑惑の目を持つようになる。己が傾いていることに気づかず、世界が傾いているようにみえているからだ。
そのようにして仏教やキリスト教もその信仰者自身に存続を揺るがされてきた。そうした宗教が伝えてきたのは「その己の心の揺らぎを見破れ」がすべてであるのに、信者は自分が揺れていることに気がつかず、すがっている教理に疑惑を持ち始める。つまりその根本教理を見失っているのだ。
けれどもその「見失った場所」とは出口のない迷路であって、一度そこにはまり込むとその迷路のなかに用意された解決では抜けられない。まったく別の「ある原理」を見出さなければ抜け出すことができないのである。
そうして人々は安心できるもの、信じられるものを探してこの世を彷徨っている。
5.
いつも書いていることだが、この世には実際は何もない。自分が「そこに見ているもの」が「そこに存在している」にすぎない。
つまり「鏡に映るものをみてはじめて、映されているものがあるとわかる」という様子にある。
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