幻想とはなにか

人間の心理について、いくつかの典型的なパターンを理解しておくと生きやすくなる。

たとえば、何かを得たり感じたりしたときの満足感、欲望充足の度合いは、その何かを得れば得るほど小さくなっていく。

これを感応度逓減性というのだけども、仮に毎日大金を稼いでいる人が臨時的に1万円もらった場合と、カツカツの暮らしを送っている人が1万円もらった場合では、数量的には同じ1万円の増加であっても、満足の度合いが違う。

つまり前者は大して満足度は高くない。金持ちなら1万円の増加に気づきもしないかもしれない。だが後者にとっては奇跡の贈り物となる。

なんでもそうだね、同じようなものを獲得し続ける限り当初の喜びは薄れていく。それが逓減性(だんだん度合いが減っていくこと)である。

ここで頭に入れておくべきは、「現状からの変化」において逓減するということだ。

1.

これは増加における逓減性だが、では損失においての逓減性はどうだろうか。心理学の様々な実験や研究から、損失は利益を得たときの「2倍の度合い」を示すことが明らかになっている。

たとえば1万円を失うとき、それは1万円を得たときよりも2倍の変化量を心理的に感じるということだ。つまり同じ数量の移動であるのに、損失は得るときよりも2倍の心的苦痛を感じることになる。

お金でも人間関係でも仕事の取引でもそうだが、少しずつ獲得していくことと、同じように少しずつ減少していくことでは、前者は増えるほどあまり喜びが少なく感じ、後者は地獄絵図となる。

失った2倍の獲得をしなければ、もとの平常状態に戻れないという心理が働くからだ。

だがそれは、1減るたびに2を稼がなければならないという自己暗示であり、しかもそれは無意識的なものゆえに、他のことをしていても得体の知れない重さが常にのし掛かっているようになる。

街をみればわかるように、人々が常に不安と焦りの顔をしているのはそのためだ。

2.

これはショッピングに置き換えてもわかりやすい。どれだけ買ってもさほど満たされなくて、また別の欲しいものを探している。そうして「買い物依存症」になった場合、購入物の満足よりも「お金を失ってしまった」という気持ちの方が常に2倍大きくなり続ける。

この場合、よほどの「お得感」があるものや、価格以上の価値を感じられるもの、つまり出費(損失)を上回る満足変化を促すものを手にするまでは心的苦痛は永遠に払拭されないことになる。買えば買うほど苦しみであり、きらびやかな街は苦行の場でしかない。

常に不足感をぶら下げているから、お金を使うことが欲求解消となるのだけども、その直後には心的苦痛が取り憑くようになっている。それを和らげようとまた散財する。そうして消費社会に走り続けさせられる。

さらには増え過ぎたものを捨てるとなると、それも2倍の苦しみだ。惜しい気持ちになってくる。部屋は不要なもので溢れかえり、それでもまだネットで欲しいものを探している。もちろんお金に関することだけではない。あらゆる損失が、すなわち「自己と思っているもの」の崩落が耐え難い苦痛を生じさせるのだ。

ではこうした問題を根本から回避するにはどうすればよいか。

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