無限の力を手に入れる(前編)

実業家でもスポーツ界でもどんな分野でも、成功を続けながら、しかもそれが揺らぐことなく安定している人たちがいる。そんな彼らにはある共通している点がある。

一時的な獲得や成功は難しいことじゃない。商売にしても恋にしても、むやみに博打を続けていればいつかは当たるだろう。あらゆる分野においてそうだ。

だがその栄華はすぐに終わる。表面的には豊かに見えていても内面は常に不安と焦りに支配される。資金がショートするか、肉体が悲鳴をあげるか、他者の動きに神経過敏になって精神的にやられるか。

現代人の多くは結果主義的に生きている。過程よりも結果がすべてという考え方だが、それを社会や他人との関係性の中で適用する場合「やった分だけ貰いがあって当然だ」という心理が根を張っていることになる。

「私はこれだけのことをした」「あなたはこれだけのことしかしてくれていない」

わかるように、この考え方はすぐに「理不尽」という不幸に陥る。そうなると周囲の人々がみんな自分勝手にみえてくるようになる。街や店のサービスが行き届いていないと腹を立てはじめてしまう。

1.

仏教やスピリチュアルの教えを聞いて、これじゃいけないと考え方をひっくり返そうにも「自分を殺して他者を立てる」という発想にしかならない。それまでの考え方がまだ前提に残っているからだ。よって「お釈迦さんはこのストレスに耐えたのだ」と誤った理解をしはじめる。

同じ土台のうえにいる限りどのように考えを巡らせても、「悟り」は単なる不感症になることか、離人症的な病理が到達点であるようにしか思えない。

無駄なことはやりたくないし、リスキーなことには手を出したくない。ゆえに「ある成功」を得れば単にそれは苦しみが増えるだけだ。正気を保つためのゲームに放り込まれる。

恋愛や家族間などの人間関係ならば、お互いに最高の気分が保たれるように常に配慮しなければならない。自分はもちろん、相手もそうでなければならない。自分がこれだけ気を使っているのだから、相手も同じ態度を示さなければならないことが当然の了解とされる。

ビジネスならば目の前には常に到達しなければならない売り上げ目標があり、後ろからは様々な請求が追いかけてくる。常に板挟みのなかを走り続けなければならない。今期の売上げに対して来年に支払う様々な税や福利厚生の額が確定するわけだから、当然「勝ち続け」なければならない。資本の小さな企業は前期を下回ることは許されない。

資本主義では歩みを止めることは死を意味する。だから結果主義である限り、お客であろうが仕入先であろうが、とにかく他者を欺き、いかに利益を保持するかに神経をすり減らせ続けなければならなくなる。

2.

しかしどんな天才であっても勝ち続けることは不可能だ。だからブレずに安定を続けるというのは、成功したいとか成功を続けたいとか、そういう次元とは別の次元をみている必要がある。

ではそんな彼らの共通点とはなんだろうか。どのような魔法を知っているというのだろうか。

その共通点、それは「心が折れるほどの挫折を経験していること」にある。

あなたの呆然とした顔がみえてくる。もちろんこんなことは耳にタコができるほど聞かされてきただろう。いったいそんな綺麗事になんの効力があるというのか。

しかもこんな先行きが不透明な時代に「失敗は成功のもと」なんてのは、景気が良かった時代、転んでもすぐに再起できた時代の語り草でしかなく、いまでは単なる迷信にしか聞こえない。

3.

そもそもいまの生活をより良くしたいから、何かに挑戦するという意欲があるわけであって、たとえ失敗しても軽傷でありたいと考える。リスクは極限にまでゼロにしたい。だから「挫折」なんてのはあってはならないことだ、結果主義の現代人にとって、そんな穴にハマるのは時代錯誤の冒険者か情報弱者の扱いだとされる。

だがいいかい、どれほどの鉄壁の情報を入手したところで真の安定は掴むことができない。

どれだけの高度なシミュレーションをしても、どれだけの金を積んでも、誰にも未来のことはわからない。これだけ科学が発展した現代であっても、明日の天気でさえ確実に言い当てることができない。

なぜなら私たちの目にはどれだけ単純な物事にみえても、それは無限の要素が絡み合った集合がそこに「一時的に」現れているものだからだ。

人間はその目先に現れた現象についてのみ対処をしようとする。それは刻々と変化する自然現象に追われ続けるということだ。そんな有様で、どうして無敗や無失敗を貫けるというのだろうか。

4.

成功や失敗というのは、単に人間が「その現れた現象」を勝手にそのように意味づけているものでしかない。だから人間の世界においては「先の保証」など決してありはしない。しかしそれは「意味づけ」においてそうなのだ。

意味はどうしてつけられるのか。求めようとしている「成功」とは本当は何のことなのだろうか。

それは「己の知る限り」においての「最大の効果のこと」であり、つまり事物が自分にとって都合よく捉えられればそれが「成功」なのだ。

しかしすべては無数の要素の集まりが変化し続けている現れゆえに、本当は物事の側に成功があるのではなく「それをどのように成功と規定するか」を決めている己の側に成功があるわけだ。

「挫折」はこのように己が積み上げてきた「成功のモデル」を破壊してくれる。こうでなければ成功ではない、という観念を木っ端微塵に打ち砕いてくれる。

そうしてこれまで発想さえも及ばなかったような次元を開いてくれるのである。

5.

よって「じゃあそれはどういうものなのか?」と挫折を経験したことのないあなたは知りたくとも、これは実際に挫折をした者にしかわからないというところにポイントがある。何を聞いてもいまの思考回路によって判断されるから、あなたにとって役に立たないからだ。

そこでその土台を崩していけるよう話を進めていくが、これらの話はあくまで、核のまわりを周回し続けるものでしかない。月が地球の周りをまわっているようなものだ。だが月の引力によって潮が満ち引くように、何かがあなたのなかで揺さぶられたのならば、それをよく観察すること。

その言葉にならない何かが重要であり、固定された成功モデルが揺さぶられていることであるからだ。

では話を進めよう。

全文をお読みいただくにはご入会後にログインしてください。数千本の記事を自由にご覧いただけます。→ . またご入会や入会の詳しい内容はこちらから確認できます→ ご入会はこちらから


Notes , , , , , , , , , , , , , , , ,

コメント・質疑応答

必ずお読みください
・会員記事のコメントはログインしないと表示されません。
・会員の方はユーザー名が入ってしまうので別名を希望の方はこちらで申請してください。
・連続投稿する時は自分の最初のコメントに返信してください。
・記事に無関係な投稿は禁止です。良識範囲でお願いします。
・対応の状況によりすべてのコメントに作者が返信できるものではありません。
規定の文字数に満たない短文、英文のみは表示できません。また半角記号(スペースやクエスチョンマークなどの感嘆符)は文字化けなどのエラーになりますので使用しないでください。使われる場合は全角文字でご使用ください。
・他の利用者を勧誘や扇動する行為、犯罪行為を正当化するコメントなどは禁止です。その意図がなくても事務局でそのように判断された場合はその箇所を修正削除させて頂く場合があります。予めご了承ください。
・同一者の投稿は1日1〜2件程度(例外を除く)に制限させていただいております。連投分は削除させていただきます(コメント欄が同一者で埋まり独占的な利用になってしまうのを防止するため)
・個人情報保護法により個人情報や会員情報に関する箇所が含まれている場合は該当箇所を削除させていただきます。
・投稿内容に敏感な方も多くいらっしゃいますので、暴力的な表現など他の利用者様へ影響を与えそうな文面はお控えください。
・意図的であるなしに関わらず、文章が途中で途絶えているものは掲載不可となります。もし誤って送信された場合は早めに追記として再投稿してください。
・マナーを守らない場合は規約違反となります。また他のユーザーや当事業部、作者への中傷や毀損と思われる言動は会員規約に則り強制退会および法的措置となりますのでご注意ください。
・投稿者による有料記事の大部分に渡る引用は禁止しております。
・スパム広告対策にセキュリティを設定しております。投稿後に承認待ちと表示される場合がありますがしばらくすると表示されます。また短時間の連続投稿はスパム投稿とみなされるため承認されません。時間をおいてください。
・コメントシステムはWordpressを利用しておりますので他でWordpressアカウント(Gravatar)を設定されている場合、アイコン画像がコメント欄に表示されます。会員登録されたメールアドレスで紐づきますので、もしアイコンを表示させたくない場合はお手数ですがこちらより涅槃の書の登録メールアドレスを変更してください。

  1. ryonryon より:
    コメント交流をご覧いただくにはログインが必要です。
    • 涅槃の書-自分 より:
      コメント交流をご覧いただくにはログインが必要です。

コメント・質疑応答

  関連記事

-->