不思議な本

すべてが書かれているという本がある

そこには太古から現代にいたるまで
私たち人類が知ってきた膨大なすべてが
書かれてあるとされる

ただしひとつ奇妙なのは
“あなた”が本を開くまでは
そこにはまだ何も書かれていないということだ

それは中身が真っ白という意味ではなく
閉じられているあいだは
まだどのような文章にもなっていない
ばらばらの”語”が自由に泳いでいる様子にある

微生物のようにそれは途方もない数だが
しかしあなたが本を開いた瞬間に
それらは整列して
なんらかの文章としてみえている

つまり本のどのあたりでもいいから
ぱさっと開いてみれば
筋のある文章が現れるわけだ

たとえばこういうことだね

あなたがアルバイトをはじめようと
どこかに面接にいってそこで採用されて
そして働いている先輩や同僚と知り合って
もしかするとその職場を通じた出会いから
同棲したり結婚したりするかもしれない

そんな”物語”が
本を開いたところに書かれている

もちろん私が開いた内容も
あなたのそれとは違う

開いた”読者”の数だけ
書かれている物語が違う

だけども個々それぞれの
物語の素材となってる語は”共通”であり
それゆえに人類が知ってきたすべてが
書かれてあるということにある

だからあなたと私で同じ語が使われてるのに
物語が違えば
それはまったく別の意味になったりするわけで

物語の進行によっては
新しい語が現れてきたりもするが
だいたいは同じ語が使いまわされて
別の意味として現れている

そう、昨日と今日とで
1日の良し悪しが違ったりするようにね

実際手元にあるいくつかの本を開いてみれば
やはり語は共通であることがわかるだろう

物語の違いとは
語の配列が異なっているだけにすぎない

またどんなに壮大な物語といえども
最初のページで出ていた語は
その後もなんども出てくる

最後のページさえ
最初のページと同じ語ばかりで
綴られているかもしれない

つまり語の見え方が変化しているだけであって
それをあなたは「人生の流れ」なのだと
捉えているだけなんだ

これは同時に
魂の変容や転生がなんであるのかを
示しているけども
それについてはまだ置いておこう

 

“読者”

さて、本を”開く”までは
アルバイト先の仕事も
先輩や同僚もそして恋人も存在しなかった

あなたが本を読んでるからこそ
彼らの姿やその日常が現れ
思いや考えに耽る自分の姿もある

仲良かった友達といまは喧嘩中だったり
だけども少し進んでみれば
お互いの誤解だったと仲直りしてたりと
ページをめくるたびに物語は進行していく

もちろんすべてを投げ出すこともできる

その方法は簡単で

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  1. masara333 より:
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    • 涅槃の書-自分 より:
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