手をつないで歩いていく
ずっと欲しかったものが手に入ったり
願っていたしていた何かが実現したとき
もちろん達成感に包まれるけども
ところが意外なことに
その達成感と同時に
少々うんざりしたような感覚も滲んでることに
気がついたことがあるかもしれない
ロボットの自由意志
特に現代は欲しいものや叶ってほしいものさえ
消費社会にエサのように与えられ続けてる状況に
あるがゆえ
いわばプログラムで動いてるロボットが
「己は自分の好きなものを自由に選んでる」と
思い込んでいるような様子にある
わかりやすい例をあげるならば
たとえば近年問題になっているように
ソーシャルゲームのレアアイテムを獲得するために
何十万円も費やしてしまう人たちが
多く存在していることがそうだろう
そのために暮らしが破綻したり
自己破産に陥るケースが後を絶たないわけだが
しかしそのレアアイテムとやらは
本当に欲しいものなのだろうか?
いやもちろん
このような疑問は愚かだといえる
なぜならソーシャルゲームに参加している時点で
すでにそのロボットに成り果ててるわけで
彼らにしてみれば
「ボクは自由に欲しいものを選んでる」と
“自由意志”にあるからだ
それゆえ
「欲しい気持ちをどうして邪魔するの?」なんて
逆に反発されてしまうことになる
こうして「ゲームの世界」に自己同一化してしまい
つまり望みや欲求そのものが
意図された市場に管理されてしまうわけだが
しかし当人は
「自分は自由だと信じてるロボット」であることに
なかなか気づくことができない
というより
ロボットである限りは気づくことは不可能だろう
気づくためには
ゲームから飛び出さなければならないのであって
“あなたという意識”がその同一化をやめることしか
その手立てはありえない
時代というゲーム
こうしてソーシャルゲームで
人生が破綻してる人たちをみて
「いやあ、怖いねえ
でもちょっと自分を見失いすぎてるんじゃない?」と
あなたは冷ややかな目で眺めるわけだが
しかしこの図式は
ソーシャルゲームだけのことではないことに
気づかなければならない
そう、日頃普通に生きてると思ってる
私たちさえ時代のロボットなんだ
そのことに気づけないのは
もちろんあなたが
「自分は自由だと信じてるロボット」だからにある
たとえばどうして
理想の暮らしや夢を抱いているのだろう?
どうして「あれが食べたい」とか
「私はこのようにありたい」などの目的を持つのだろう?
どうしてそれが良いものだと思ってるのだろう?
つまりそういった目的はなぜ
あなたのなかで目的化されてるのだろう?
それはまさに
あなたがこの時代と共にあり
時代の精神や価値観が基本にあるからだ
それゆえに
「レアアイテム」を求めるゲームのなかに
はじめから立っているわけで
そのレアアイテムは
理想の恋人像かもしれないし
結婚や出世やお金持ちになることかもしれない
だから大事なのは
“自分”は常に世界の反映であるのだと
気づいていること
そうして気づいているならば
少し距離を置きながら
つまり破綻しない程度に
時代が用意する”目的”を追い求められるようになる
嬉しいはずなのに・・
さてここで冒頭の話に再び戻るけども
願っていた何かが実現したとき
その達成感とは裏腹に
なんだかうんざりしたような感覚になるのは
現代のように
流行や広告宣伝に踊らされた時代において
より顕著になってくるわけで
それは願いが実現する体験や回数を
人生で何度も重ねていくからだが
つまり言いかえれば
いまのような時代でなくても
やはりその本質は変わらないということだ
たとえばあなたが古代の時代に生きていて
「いつかこの海を越えて
誰も知らない大地に到達したい」
と願っていたとしよう
そしてある日それが実現した
あれよあれよと
大きな船が調達できることになり
出航した先に誰も知らなかった楽園に辿り着いた
ところが大きな歓喜と祝杯をあげているなか
どこか冷めた気持ちを感じている
もちろん現代のように繰り返し何度も
達成感や獲得が体験されるような時代ではないから
その冷めた気持ちは
ただぼんやりしたものかもしれない
違和感をどこか感じながらも
こんなに喜ばしいことはないという大義名分で
それは塗りつぶされるだろう
だがその違和感があるのは確かなんだ
得れば得るほど失われる感覚
その違和感はなんだろう?
現代はそれが繰り返しやってくるから
なにかを達成するごとに
もはや虚しさのほうが
上回ってみえてくるかもしれない
欲しかったものを手に入れた瞬間に
もう熱は冷めてしまったり
恋人とあんなに夜を語り明かしていた
夢の暮らしがはじまった途端に
もう特別感は微塵も感じられない
同様に太古のあなたが
また別のなにかを達成したとき
それはまだ喜びの方が上回っているだろうけども
「私はたしかに実現した。・・で?」
という奇妙な不満足感が
だんだん見え隠れするようになる
古代の帝王が自らの領土をどれほどに拡大しても
まだまだ足りないと侵略を続けるのは
まさにそのためだ
それはいまのIT長者なんかも同じ
どれだけお金を稼いでも
どれだけ裕福になっても
達成した分だけ
なにも得ていないような感覚になってる
言いかえれば
得れば得るほど
それまで持っていたものが
失われた気分になる
だからこそ狂ったように
ひたすら稼ぎ続けようとするわけだ
虚しさの正体
どうしてそうなるのかといえば
願っていたことが実現したそのとき
ひとつの神秘に触れるからにある
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