自己管理の法(37)
前回に続いて、よく届く相談なんだけども、お菓子やコーヒーなどの嗜好品がやめられない、だめだとわかってるのについつい手を出してしまい、そしてあとでいつも後悔をする。
よくあることだが、たとえばコーヒーを飲みながら読書をする習慣がついてしまうと、コーヒーを飲まなければ読書ができなくなる。または読書をしようとするときに、コーヒーがどうしても飲みたくなる。
つまり読書とコーヒーが関連づいてしまっているわけで、単にコーヒーをやめようとするだけでは、それによってもたらされていた作業の効果を失うことにもなり、なかなかやめることができないんだ。
だからまずはその関連を解除しなければならない。
「別にコーヒーを楽しみながら読書するぐらい、いいじゃないか」とあなたは思うかもしれないが、これもまた人生を大幅に制限する罠でもあるので、よく学んでおく必要がある。
コーヒータイムだけ進める人生
さて、どのように制限をかけてしまうのかといえば、仕事や勉強にしても、たとえばそこにコーヒーがワンセットになると、コーヒーを飲んでいる間しか捗らなくなるということだ。
近年はカフェワークが流行しているけども、香りや音楽に溢れたお洒落な雰囲気のなかで作業をすることが刺激になっていたものが、やがてその刺激自体に閉じ込められてしまう。
それによってカフェそのものへの要求も高くなり、他の利用客を邪魔に感じたり、あちこちのカフェやファミレス巡りに膨大な時間やお金を費やしはじめることになる。このような「こうでなければならない」といった神経質な心境もカフェインの副作用にある。
しかし「作業や仕事をする」という表向きの大義名分があるゆえに、そうしている自分は幸福で素敵に映り、つまり行為が正当化されることによって「関連の解除」は難しくなり、人生はますます制限されてしまうわけだ。
そもそも仕事や作業の合間のひと時にコーヒーブレイクが差し込まれることで緩急がつくものなんだけども、ところがそのブレイクの「わずかな時間」にだけ作業を集約するようになってしまうことに「罠」がある。
まるでその瞬間のためだけに生きてるような様子となるわけだが、その数分間でいったいどれほどの作業ができるというのだろう?人生はどれほど進むというのか。
なにより重大なのは、そのきらきらタイム以外の大部分の時間、それはただ無気力と注意散漫の精神状態で埋め尽くされてしまうということだ。
つまり文字通り「逆転」となり、見事にコーヒーショップチェーンのカモとなる。もちろん逆転しないように心掛けているならば、素晴らしい空間であることは間違いないがね。
自由という名の不自由
かといってカフェを離れて自宅でコーヒーを淹れるようになれば、逆転が解消するわけでもない。
最近はテレワークなどで実感している人も多いだろうけども、ちゃんと自制心を持っていなければ、手軽さや安いコストもあってカフェインの摂取量はどんどん増えていくことになる。
よく「自営業は自由でいいなあ」という会社勤めの人たちは多いが、自由というものが本当はどういうものかわかっていないゆえ、たとえばコロナで自宅勤務になった途端に「自由という名の不自由」に飲み込まれてしまう。
それは何もない地面に水を撒いているようなもので、水は勢いもなく広がってもいかない。つまり自らで「水路」を作ってそこに日々のエネルギーを流し切るからこそ進歩や充足があるのだけども、そうした「不自由という名の自由」を理解するには、失敗や自問自答を繰り返して自らで学ぶプロセスを必要とする。
もちろんそれはコーヒーを飲んでいる間だけフルに活動するなんて話ではない。日中すべてを水路に流し切るということ、それが「何もない平野」を旅してそこに真の財宝を見出す者たち、すなわち”自営業”の真髄にある。
実際カフェインの摂取量が増えるたびに、覚醒感や香りによる効能は下がっていき、ますます「作業が可能な時間=人生が進展する距離」は短くなる。日中18時間のわずか数分程度しかもたない。
そのわずかな間しか、作業に腰を入れることができなくなるわけだ。
知らずのうちに逆転している
お菓子なんかもそうだね。
困難な作業を前にしたとき、甘いものを口にすれば、そのストレスが緩和された気分、安らいだ気分になるが、だが本当はそれらに依存しているからこそ、目の前のなんでもない作業が険しい困難にみえているんだ。
これも逆転が起きているね。
つまり甘いお菓子を食べて得られる安堵こそ、実は「本来の状態」なのであって、過剰な糖分摂取が常態化しているゆえ、血糖値の変動で日頃のほうが不安感に陥っていたにすぎない。その不安感や落ち着かなさを解消するために、また甘いものに手を伸ばす悪循環にある。
タバコを吸う人もそう、たとえば食後に一本吸わなければ食べ終えた気にならないだろうし、物事を考えるときにタバコに火をつける癖がついてしまったりもするんじゃないかな。
しかしそれは頭が冴えた気がしているだけで、本当はその逆なんだ。
タバコに依存してしまったことで、”普段”がぼんやりしてしまっているにすぎないわけで、つまりその明晰な”瞬間”が実は通常の状態だったんだ。
人生を「至福の瞬間」から救済する
こうして「ごくわずかな瞬間」の”なか”にのみ、人生の歩みは閉じ込められてしまう。
またこのように嗜好品との関連付けが出来てしまうと、その嗜好品だけの問題ではなくなり、人生を進めるためには強制的にそれに手を出さなければならなくなる。それゆえ「やめたいけどやめられない」んだ。
ましてそれをしなければ「頭が回転しない」とか「安らげない」という観念が固着してしまって、”本当に”頭が回転しない、安らげない状態を自らで作り出してしまう。
さらには「現実」のすべてがこれと同じ構造をしていることに気づいてみよう。
つまり本当は問題など起きていないのに「問題が起きてる」と思い込み、そこに心血を注ぎ込んで苦悩している限り、問題はそこに現れ続けるんだ。
このスパイラルから抜け出すには、
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