良心と創造世界

この世は表象である
つまりあなたの心のなかに
浮かんだ像でしかない

人や物もそうであるし
自分の体の動きもそう

心のなかの像が
ただ変化していくだけであり
あなたは生まれてから
一歩も動いたこともない

見る、動く、
そうしたものはすべて
「そのように考えているだけ」なのである

仏教の空思想や唯識
古代ヒンドゥーのブラフマン
ギリシャ哲学ならびに
デカルトやドイツ観念論など

立場の違いはあれど
語り継がれてきた宗教のほとんどすべて
また歴史的に記されてきた哲学の大半が
この世は思考による
観念の所産であるとしている

青空も樹木も花の香りも
公園で走りまわる子どもたちの姿も
すべてイメージ(表象)だということだ

 

1.

「立場の違い」というのは
二元的なものとして語られているか
一元的なものとして語られているかの
違いとなる

無論「一元として語る」というのは
矛盾しているが
つまり自我が表象を見ているか
それとも
表象のなかに自我があるのかの違いとなる

前者はいつものあなたの感覚だ
どのような不思議な話を見聞きしても
それを見聞きして驚いている自分がいる

だが後者はその見聞きしている自分も
その「不思議な世界の一部分」となる

これも矛盾となるが
あなたの本性は自我を超えた
「何者かの視界である」ということに
一旦はしておこう

つまり「全体でひとつ」という
二元性の向こう側(彼岸)を察すること
それが悟りというものとなる

彼岸へ完全に逝ってしまうこと
すなわち、
自我が完全に消滅することを成仏という

その成仏なる世界(一元世界)を
こちらの世界に生きながら
その超えられない二元性の観点から
察していることが悟りなのだ

注意しなければならないのは
彼岸の世界も「ここ」だということである

遠く離れたどこかにあるのではない
「自分も不思議な世界の一部」なのだ

つまり亡くした者たちや
過ぎ去った物事は
二元的にそれを捉えようとするから
それが見えないだけであり
いまもずっとここに在り続けている

ゆえに論理的に説明がつかないような
奇妙な出来事が起こる

二元性は一元性の基に立っているからだ
一元の世界に因果関係はない
ゆえに「理解」を超える

そして「そのすべて」は己であるのだ
つまり全体はいつも「ここ」なのである

 

2.

さて、私たちの生きている世界とは
表象という「受け取った結果」を
みていることにある

ではその結果はどのようにして
描かれるのか

つまりどのようにして
この現実がみえているのかについて
進めていこう

たとえばあなたが正義をかざせば
そこには悪がうまれる
こうして二元性が生み出される

現実とはこのような「あなたの作品」が
展示されたギャラリーのようなものだ

そのギャラリーという空間に
あなたの作品がたくさんあるのだけども
つまり表現を変えるならば
その無からあなたの作品が
「生まれては消えている」といえる

そしてなにより
ギャラリーには「観覧者」がいる
あなたの作品を楽しむ者だ

そうでなければ
あなたは成仏していることになり
二元世界を体験することができない

だがその観覧者というのは
個人のあなたのことではない

なぜなら
個人のあなたも展示されている作品だからだ

その性格やら考え方にいたるまで
「自分」という飾られたものでしかない
だから「自分を知る観覧者」がいなければ
あなたは自分をそこに浮かべることができない

だがその観覧者を「想定」したところで
単に自分の分身の神視点ができるだけで
二元世界を超えていない

つまり
「ギャラリーを観覧する者が描かれた絵」が
ギャラリーに展示されているだけとなる

「自分」の横に「自分をみている者」という
絵が並ぶだけだ
ミイラ取りがミイラになるようなもの

では観覧者とは誰だ?

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