倒れない鉛筆
バットやグローブがあるだけでそこには「野球」はない。どこを探しても見つからない。それは「自分」も同じだ。この肉体があるだけで、どこにも自分は見つからない。
またこれまで使っていたバットを新しいものに入れ替えたり、別のグラウンドで試合をしても野球は消え去らない。あなたの肉体も同様に、毎日刻々と臓器などの細胞は入れ替わっている。1年もすれば体のほとんどはまったくの別物だ。
そうした細胞個々のめまぐるしい生命活動が行われているなかで、なにより奇妙に感じるのは「どこにも着地点がない」ということだ。
均衡にあるということ
たとえば顔のシワやお腹の脂肪でさえも、わざわざ細胞はクローンを作ってその形状を維持する。つまり「新品」のシワやたるみであなたは常にリフレッシュされているわけだけども、それは言い換えてみれば、車が走行しながらエンジンなどの部品交換を続けているようなものだ。着地点、すなわち完成がないのだ。それはまるで「部品交換をし続けること」が走るための動力のようでもある。
つまり駒が回り続けることで自立しているように、生命とはこうした均衡した状態、つまり常に宙に浮いた状態にあるということだ。
手のひらを広げて鉛筆を垂直に立てる。当然じっとしていれば鉛筆は倒れるだろう。倒さないためには手を前後左右に移動し続けなければならない。まさにこの鉛筆が建ち続けている様子こそが、私たち、そしてこの世界を表現している。
この「手が動き続けていること」が生命エネルギーとなる。つまり生命とは鉛筆が立っていることではない。あなたの肉体は常に流れるエネルギーの「結果として」そこにあるということだ。
この世の流れ
さてここからが重要となる。
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