ペルソナの世界(1)
今回は私たちが人生として経験している「人間の世界」に焦点を当てて考察しよう。つまり現実という幻想についてとなる。「人間とは何か」を理解することで、あらゆる対人関係(会社や家族、恋人など)の苦悩を解消し、そして満たされた人生を生き始めることができるようになる。
でははじめよう。
1.
まず人間とは「人-間」であり、人の間と書く。だからもし誰もいない惑星に漂着して暮らしているならば、あなたは人間ではない。
それは人間という呼び方がなくなるというだけではなく、あなたがただひとりしか存在しないということは、あなたの体験したことを保証する他者がいないということであり、つまり何が現実で何が妄想なのか、その区別がつかなくなるということだ。
だけどもこの見解は、いまあるこの世界が真実であるという前提に基づいて話している。つまり周囲に他者がいるから、いまこの現実が真実だと思っているにすぎないわけだ。
よってこう言い換えることができる。「他者の保証というものを当てにしなければ何も成り立たなくなる」というその構造そのものが、人間の世界だということ、要は「他者」がいれば、それがどのような光景であろうとも「リアルな現実」であり、あなたにとっての真実となるわけである。
ここでいう「他者」とは、人だけではなく、自分以外の物事すべてを指している。
2.
というわけで他者が存在しているから、あなたの「現実」があるわけだが、それは「現実」「自分」「他者」の3つは相互的に不可分な関係にあるということだ。
つまりどれかひとつ欠けると、それ以外も消え去ってしまう。
よく出す例だが、バットとグローブがあって野球が現れる。だが野球は実体がない。しかし野球が存在しないとき、バットは「バット」ではなくただの棒でしかない。グローブは革手袋でしかない。つまりバットやグローブも実体を持っておらず、それらがバットやグローブであるためには、野球が必要であり、相互に「幻想」を成立させている関係にある。
人間の世界はこれと同じ原理にある。つまり様々な要素が絡み合って、ひとつの幻想を生み出している。釈迦はこれを因縁生起といった。
そこで今回は「バット」を表象、「ただの棒」を本質と呼び変えよう。表象と本質だ。覚えたかな。つまり「バット」という表象とは野球における「役割」を演じているということになる。
本当は「ただの棒」も表象であり、突き詰めるとすべては実在でないことが判明するが(諸法無我)、いまはそこまで潜らないでおく。
3.
では人間世界における「役割(表象)」とは何かといえば、人格のことになる。以下は少し前にコメント欄に書いたものだが、参考に引いておこう。
-以下 引用-
人間の生、つまりあなたの人生とはどれだけ多様で複雑にみえても実はシンプルなものだ。それは「自分の心と向き合うこと」のみにあるからだ。そしてそれは「他者と関わっていること」が前提にある。
人間とは「人-間」であって「人の間」と書くわけだけが、つまり関係性がその主体にある。たとえばあなたがどこかの店に入ったならば、店員と客の関係にあるわけだ。
そこでは店員は店員らしく振る舞い、あなたは客らしく振舞う。「客っぽい話し方」をして、客の振りを演じ続ける。姿を見せない「主体」が、フリーな者たちを店員と客に振り分ける。
そして店を出て帰宅すれば、自分が夫ならば奥さんの前では夫らしく振舞う。夫っぽい話し方をする。
このように「人-間」の世界は、他者との関係性が常に決定し、ペルソナを演じ続ける。しかもそれは相手との関係だけではなく「己が自分自身との関係を見ている」ということでもある。
だから「人-間」は二者ではなく、そこには常に「もう一者がいる」のだ。その第三の者に気づいたら、世界の見え方や関わり方が違ってくるだろう。二者間だけでは「逃げ場(=余白、スペース)」がないからね。
大事なのは、そうした同一化によって社会は存在しているということ、また同一化によってこそ「自分」は存在するということ、そしてその同一化に縛られることで、苦しくなってしまうということにある。
関連記事
- PREV
- 恋や友情、絆について
- NEXT
- ペルソナの世界(2)
コメント投稿の注意事項
以下をかならずお読みください。
・公序良俗に反する内容、品性に欠いた文章、その他、閲覧者に不快感を与えると判断された投稿は掲載不可の対象となりますのでご留意ください。コメント欄は常時多くの方が閲覧しておりますことをご理解の上投稿してください。
・会員記事のコメントはログインしないと表示されません。
・会員の方はユーザー名が入ってしまうので別名をこちらで申請してください。必須。
・追記などを投稿する時は自分の最初のコメントに返信してください。
・記事に無関係な投稿は禁止です。良識範囲でお願いします。
・ハンドル名が変わっても固有idに基づき本人の同一性が保たれます。
・対応の状況によりすべてのコメントに作者が返信できるものではありません。
・規定の文字数に満たない短文、英文のみは表示できません。また半角記号(スペースやクエスチョンマークなどの感嘆符)は文字化けなどのエラーになりますので使用しないでください。使われる場合は全角文字でご使用ください。
・他の利用者を勧誘や扇動する行為、誤解を与える表現、卑猥な表現、犯罪行為を正当化するコメントなどは禁止です。また全体の文脈の意図を汲み取らず言葉の端や表現に用いられた構成部分だけを抜き出してその箇所のみへの質疑や意見する投稿も当事者にも他の閲覧者にとっても無益となりますので禁止です。それら意図がなくても事務局でそのように判断された場合はその箇所を修正削除させて頂いたり、または掲載不可となりますので予めご了承ください。
・同一者の投稿は1日1〜2件程度(例外を除く)に制限させていただいております。連投分は削除させていただきます(コメント欄が同一者で埋まり独占的な利用になってしまうのを防止するためであり日を跨いだ投稿も調整させていただく場合があります)
・個人情報保護法により個人情報や会員情報に関する箇所が含まれている場合は該当箇所を削除させていただきます。
・投稿内容に敏感な方も多くいらっしゃいますので、暴力的な表現など他の利用者様へ影響を与えそうな文面はお控えください。
・意図的であるなしに関わらず、文章が途中で途絶えているものは掲載不可となります。もし誤って送信された場合は早めに追記として再投稿してください。
・マナーを守らない場合は規約違反となります。また他のユーザーや当事業部、作者への中傷や毀損と思われる言動は会員規約に則り強制退会および法的措置となりますのでご注意ください。
・投稿者による有料記事の大部分に渡る引用は禁止しております。
・スパム広告対策にセキュリティを設定しております。投稿後に承認待ちと表示される場合がありますがしばらくすると表示されます。また短時間の連続投稿はスパム投稿とみなされるため承認されません。時間をおいてください。
・コメントシステムはWordpressを利用しておりますので他でWordpressアカウント(Gravatar)を設定されている場合、アイコン画像がコメント欄に表示されます。会員登録されたメールアドレスで紐づきますので、もしアイコンを表示させたくない場合はお手数ですがこちらより涅槃の書の登録メールアドレスを変更してください。