意識と無意識(中編)

前編までは無意識という領域が「どういうものなのか」について進めてきた。さらに理解を深められるように、ここで一旦あなたの頭を「ある方向」に向け直す必要がある。

どういうことかといえば、現存する様々な学問や見解とは、無意識層から流れくる「印象」を「なんらかの観念としてまとめたものにすぎない」ということを、しっかりと念頭に置いておかなければならないということだ。

たとえば今回テーマにしている「無意識という言葉」もそうだ。無意識はフロイトから頻繁に使われるようになった言葉であるが、彼は「ある何か」を伝えるために無意識という言葉を用いたのであり「これが無意識です」と言っているのではない。

正しくは「これを伝えたいが、どう伝えていいかわからないから無意識という言葉を使います」なのである。その言葉が便利なので、以降はみんなが使うようになる。つまり言葉こそが「発明」なのだけども、それは言葉自体に囚われるものではない。あくまで「ある何か」を伝えるための「道具の発明」なのだ。

これがわかってしまえば、あなたは現実から解放される。だが「そのこと」を知るためにはその「虚構の現実」を過ごすなかで、その「虚構の現実」を通じて悟らなければならない。

意味という名に意味を見ようとするのではなく、漠然とした物体がそこにあるだけであることを知るということだ。意味に囚われる以上、答えを探してしまう。だがそうではなく、そこにある問いが「答え」なのだ。

 

絵の具

美しい絵画があるならそれは「美しさ」がそこにあるのであり、決して「絵の具」を伝えているのではない。画家が感じていた「ある何か」を絵の具を用いて表現したのだ。それは本書も同じく「ある何か」を伝えるために言葉を使う。どこかへ向かうのに交通機関を使うように、既存の便利な言葉を使う。または独自に発明をする。すべては「そのどこか」へ到達するためだ。

よく「学校の勉強なんか何の役にも立たない」なんていう人がいるが、それはその通り、それ自体に価値はない。だが誰もが人生の背後に感じている「意味を持たない何か」を、学校で学んだことを通じて「表現することができる」のだ。それが万物の価値である。

そしてそれは物事だけでなく、家族や会社のひとなど、自分が人生で関わるすべての人々が「己に対して」その役割を担っている。「相対性理論」も「リンゴ」も「猫」も「ティッシュの箱」も、言葉というのは「月をさす指」であるのだ。

だからいくらでも「言葉」は覆される。ダーウィンが「使った言葉」で、それまでの「人間は神の子である」という言葉がひっくり返された。ガリレオが「使った言葉」で、それまでの「太陽が大地から昇る」という聖書の言葉がひっくり返された。おかげで彼らは世間から批判され宗教裁判にもかけられた。

 

議論というのは実にくだらない

その昔は太陽が地球の外を周っているとされていた。だがいまは地球が太陽を周回するといわれている。だがそれらは言葉という道具が違うだけで「同じもの」を伝えているのだ。画家が違う色で表現しているにすぎない。

その「ある何か」を伝えようとしたひとは、それを伝えるための言葉を選んだだけなのである。だが人類はその「言葉」について議論をする。「絵の具」について議論する。そのように「月」ではなく「指」についての決着ばかりを求める。

ゆえに「常識が覆される」となるのだけども、転覆したのはその「言葉という道具」なのだ。「原初の何か」は何も変わってなどいない。議論できるのは「その道具」についてのみであり、つまり議論というのは実にくだらないことなのだ。それは現実上での「問題解決」も同じである。

他人と言い争うことの愚かさ、人生について悩むことの愚かさ、そうしたすべての「愚かさ」は言葉をどうにかしようとしているからであり、つまり紙を切ろうとするときにハサミについて苦悩している様子でしかない。とにかく切ればいいのだ。ならばハサミはなんだってよかったのだとわかる。

いずれは「種の起源」も「地動説」もまた別の言葉に置き換えられるだろう。現に物理科学が「新しい言葉」を準備してきている。だがどれだけ言葉が違おうとも、そこにあるものは常に同一なのである。

 

死とは何か

だから「どこぞではこのように言われていたのに、こっちでは反対のことを言っている」といって言葉に振り回されているのでは、まだなにも見えていない。知識とは言葉でしかない。

人間関係でも暮らしでも「言葉の奥にあるもの」を感じること、それがもっとも重要なことであり、それこそがあなたの到達すべきところなのだ。なぜなら、あなたの日々やその人生そのものが、「ある何か」を言葉に置き換えて連続したものに過ぎないからだ。

最後は「死という到達」で言葉を超える。だがそれは「言葉の死」である。ゆえにそれはいまここで可能なのだ。つまり生きながら死ぬこと、死とともに生きることこそがあなたを苦悩の世界、すなわち言葉の鎖の世界から解き放つのだ。

これが今回の連載で伝えようとしていることである。「無意識が〜」という言葉を使って語られることが、すでに無意識の領域を示しているということだ。

 

混沌の向こう側

古来より、東洋、西洋問わず、宗教の人は自然の風景を愛するが、それは俗世間の人々が知る「単なる自然」を堪能しているのではない。原生の自然という「混沌」こそが「彼岸」なのであり、言葉に置き換えられる以前の「原初にあるもの」を感じ取っているのだ。つまりそこに「神」を見ているのだ。

繰り返すけども「理解の理解」すなわち「言葉の意味を知ること」が、現実という二元性での板挟みから、一元的な超越へと解放されるのである。この手記が「否定の否定」で高次へ到達しようとしているように、あなたも人生においてそうであることだ。

ではこうした理解のもと、どのようにして現実というプロセスが生成されていくのかに入ろう。

 

言葉の世界

家族や恋人とは実在のものではない。「言葉」をそこに見ているだけだ。人だけでなく、暮らしも、ネガティブな感情も、思考も、実現されている現実のすべて、また「実現させようとしている現実」でさえも、原初の何かを「言葉で置き換えたもの」である。

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