渡し舟
命がけで戦禍から逃がれて
安住の地で長年暮らすことのできた家族が
当時を振り返る
──
逃げている途中に
大きな河に阻まれましてね
戻ることも
橋をさがしてさまようことも危険でして
すると川辺に住む親切な老人が
小舟で向こう岸まで送ってくれたんですよ
最初はとても頼りなく思いましたが
本当に感謝しかありません
あの小さな渡し舟が
私たちをいまの生活につなげてくれた
小さく細い橋のようなものだったのです
──
この家族は過酷な時代を過ごしたわけだが
たとえば現代なら役所での手続きもそうで
窓口の人と申請用紙が
まさに老人と渡し舟にある
手続きをしてもらえたからこそ
あなたは次へと進むことができた
そうしてみれば
人生はその繰り返しだとわかる
つまり新しい未来へ進んでいくには
大体は大きな河が行手を阻み
そしてそこには誰かが立っている
その人は親切心からだったり
単に職務をこなしているだけだったり
さまざまだけども
しかしその人がいてくれたからこそ
あなたは向こうへ渡ることができた
そう、いまここにたどりつくまで
たくさんの渡し舟に乗せてもらえてきたんだ
彼らが話すように目の前には
頼りなさそうな小さく細い橋しかなかった
それに委ねるしかなかった
もちろん悪徳な人もいたりするだろうし
騙されたりすることもある
私も散々な目に遭ったりした
取り返しのつかないことにもなった
だから見極めなければならないが
それはその相手というよりも
Notes 世界, 人生, 人間関係, 他者, 奇跡, 存在, 感謝, 現実, 生きる意味
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