時間を逆転させる

ある著名な画家がいるとしよう
名前はなんでもいいが
アンドレにしておこうか

彼が芸術の道へと踏み込んだのは
もちろん幼少から親しんできた
数々の芸術作品の影響を受けたからだ

そうした影響がなければ
作品を描くことができなかった

彼は先代の画家や作品から多くを学び
それを自分の技量として吸収した

だがそれは見方をかえれば
彼がキャンバスに向かって
何かをしているのではなく

先代の画家たちが
アンドレに対して何かをしていることになる

すると彼の作品のすべては
過去の画家たちによるものなのかとなるね

過去の芸術家たちの操り人形であり
その呪縛の糸からは逃れられないわけで
彼が何を思いつこうとも
それは過去の芸術家の影響下にあるわけだ

この図式を
あなたの日常に置き換えてみようか

日頃から思考や感情に振り回されるが
その原因となるのは
外の物事や他人の言動からだ

また過去の経験もそうだろう
現在のあなたのあり方に
大きな影響を与えている

前向きになろうとしたところで
そうやって
「立て直そうとしていること自体」が
他者の支配下にあるといえる

つまりあなたは何をしていても
他人の操り人形だということになる

 

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しかしアンドレに影響を与えた
画家たちもまた
さらに先行する誰かの影響を受けている
こうして影響関係は受け継がれていく

釈迦にも同じことがいえる
彼の出身であるインドの宗教や
当時伝搬していたエジプトや
ギリシアの知恵を知っていた

では釈迦の教えの意義とはなんだろう?
彼も操られているだけなのだろうか

たしかに私たちは
「人間的な認識」というフレームのなかに
世界を捉えている

それを崩してしまうと
ここは人間の世界ではなくなってしまう
しかもそれは基礎的な認識だけでなく
思想も当然「枠の中」に現れるわけだ

ならば仏教は独自の思想や体系を生み出したが
やはりそれも先人の影響の
「反動」にすぎないのだろうか

そうなると
あなたが他者に振り回されているのと
何も変わらないことになるね

たとえば「己自身を拠り所にせよ」と
釈迦が述べたその内心には
「だってそうあるしかないじゃないか」
といったような
不条理に対する陳情にすぎないのではないのか

同様にアンドレが独創的に描いたところで
常にその原因となるものに
支配され続けている結果にすぎず
すべては先人の影響であり
その先人もまた先人の影響にある

こうしてどこまでも続く原因の連鎖に
私たちは操られるしかないのだろうか
ということだね

だがそうではないんだ

釈迦は自らの思想を持っていたのであり
アンドレの作品も唯一無二のものとなる

素晴らしい音楽家や
歴史に刻まれた政治家にしても
まったく新たな独創を
人類の記憶に残していった

だがそれはどういうことだろう?

過去から続く現在にありながら
いったいどうして
その因縁の鎖を抜け出せるというのだろうか

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