ちいさな歯跡

床に置いてある荷物に気づかず
足をぶつけてしまったとしよう

激しい痛みが走ると同時に
あなたは腹が立ってくる

なぜならその荷物は
「片付けて」とあれほど伝えていたのに
家族がそのままにしていたからだ

怒りに身を震わせて
家族に文句を言いたい気持ちになる

ところがもしその荷物が
まったく別の理由で置かれていたら
どうだろうか

たとえば宝くじで1億円が当たって
嬉しくて酔っ払って
その札束のつまったカバンを
置きっぱなしにしていたようなとき

足をぶつけて痛いのは同じだけども
すぐに「ああそうだった」と思い出し
満面の喜びに浸っているのではないかな

このように「痛み」それ自体は
不幸でもなければ幸福でもないんだ

「これは・・こうだから・・こうだ!」
という解釈によってこそ
その痛みという「無記な何か」が
現実的に何であるのかを決める

つまりこうした三段論法が
瞬時に心に働くことによって
「あなただけの現実」が確定することになる

 

 言葉の並びで不幸になる

日頃から心を眺めてみればわかるが
言葉の配列(語法)がなければ
私たちは何も考えることができない

不安や怒りも思い浮かべることができない

実際そうだから
常々心の動きを観察してみよう
なんらかの思考や感情があるとき
そこには必ず言葉の「並び順」があるはずだ

つまり刻々と変化する日常のなかで
ある何かが意識されたとき一瞬のうちに
「これは・・こうだから・・こうだ」と
順序づけられてはじめて
目の前の他者や物事が「何であるか」が決まる

あなたが腹を立てるときも
「腹が立つ」という心に書かれた文章を
復唱しながら腹を立てているわけだ

だから陽気で前向きな人というのは
その瞬時の配列がポジティブなものとして
作られていることになる

たとえマイナスな配列になったとしても
それを無自覚なままに放置せず
自発的に組み替えようとする意志の力が働く

というわけで
家族の失態であれ1億円のカバンであれ
荷物にぶつけた痛みは「同じ」であるけども

だがその痛みが「なんであるか」は
人それぞれ違うわけだね

現実の違い、まして幸福か不幸かの違いは
ただそれだけのことであり
言葉の並びとは
つまり「信念体系」のことにある

さてここである大事なこと
注意を向ける必要がある

幸福でも不幸にもまだ染められていない
不意に到来した「無記の何か」があるね

上の話なら
荷物にぶつけた「痛み」がそうだが
そもそもそれは一体なんだろうか

その痛みが不快か快いかは
心の解釈で決まるが
同様に「痛み」という表現さえも
事後的に与えられた意味付けにすぎない

その観点からいえば
他人や物事が「何であるか」だけでなく
目に映るその他人や物事の姿もまた
本当の姿ではないんだ

 

ちいさな歯跡

たとえばこんな話を想定してみよう

ある冬の寒い帰り道で
横たわって息も絶え絶えになっていた
まだちいさな子猫をみつけた

あなたはどうにかしてやりたいと思い
すぐにタオルでくるんで
近所の動物病院へ運んでやった

獣医は危険な状態だからと
様々な処置を施してくれたはいいが
結構な請求額となり

また運ぶ途中であなたの親切が
まるで疎ましいかのように子猫は抵抗し
力いっぱいに噛まれた指も痛い

「もう!せっかく助けてやってるのに」と
消毒しながら世知辛い現実に
相変わらず理不尽を感じていたわけだ

だが翌日
毛布を敷いた箱のなかで
その子猫は死んでいた

暖かいその場所で
眠るように丸まっていた

その表情はとても安らいでいて
優しさで溢れているようにみえた

助けてくれて嬉しかった
ありがとうと
まるであなたに伝えているようだった

ふと指の絆創膏に目が向いた
まだ痛みは残ってる

でも不思議だね

その子はいないのに
痛みだけがある

 

いつも何かが到来している

昨日会社を出るまでは
まだ子猫と出会っていなかった
この世には現れていなかった

翌朝のいまもまた
この世のどこを探してもその子はいない

ただ残された指の痛みだけがあり
この感覚(無記なるもの)こそが
すべてを生み出していたかのように
あなたは感じている

なぜなら痛みはここにあるのに
他のすべてはもうここにないからだ

つまり子猫も獣医も
高額な治療費も幻想だった

さらには治療費を払った手持ちのお金も
それを得た仕事先にしても
時空を超えてすべてが連動していたこと
気づきはじめる

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