現実変更と恋愛と信じること(後編)
さて、すべてはフィーリングのなかに生まれている。
いくら科学的な根拠を前提にして生きていても、その科学自体が常に覆されるものだ。大きな話でいえば、数百年前まで地球の周りと太陽が回っていたとみんなが「信じて」いた。だがコペルニクスが地球こそ太陽の周りを回っていると話した後、いまや誰もがそうであると「信じて」いる。
毎朝地平線から太陽のほうが昇ってくるようにみえても、そのように教えられてきたから信じているわけだ。
社会や文化もそう。たとえば「恋愛」というのは誰もが普遍的に続いてきた人間の営みであると信じているが、恋愛という概念ができたのもこの数百年程度の話である。ガチガチに固められていた厳粛なキリスト教義の世界のなか、12世紀ごろに「不倫をする」という型破りな快楽を求める流行によって生まれたのが「恋愛」の発祥とされている。
その後のルネサンスの時代での美術への観点の変更によって、女性はそれまで優しさや母性的な象徴であったものが、快楽や美的なものというイメージにすり替わることになる。男は女を求め、そして女は自分を満たせてくれる男を待つようになる。そうして社交界やらに発展していった。
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やがて恋愛は企業のキャッチコピーとなる。これほど大衆に効果抜群な宣伝文句はないからだ。
これであなたは美しくなれますよ、この映画は儚い恋が描かれてとても感動しますよ、という感じであらゆる商品が恋愛を土台にするようになった。旅行も食品もファッションも娯楽も、すべてがピンク色に染められている。
人々は恋愛というものを「男女の純粋な営み」としてみているが、その恋愛がどうにもアンバランスな展開にしかならないのは、そもそもそうした経緯で成立したきた虚構であるからだ。
つまり守るべき家庭がある前提で、ほんの火遊びを男女ともに楽しんでいたものが恋愛の本質にあり、それは求め合うもの、傷を舐め合うためのゲームでしかない。「真の愛」へはそのセクシャルなドアからは通じてなどいないのである。
だが現代の人々は恋愛が正しいものだと信じている。恋愛せずにどうして男女の深い絆(友人や知人以上の仲)が結べるのかと疑問に思うだろう。ここに本稿の重要なポイントがある。
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結婚生活も「恋愛的意識が必要である」と誰もが思い込んでいる。相手に冷めたとか、他の異性に目移りするだとか(それがまさに「本来の恋愛」だ)、そうして「恋愛観」が維持できないゆえに離婚したりする。また誰もが自己嫌悪しながらも恋愛を成立させなければならないと思い込んでいる。それは脅迫的な様子にさえある。
しかも傷つきたくないからと駆け引きをする。相手より優位に立とうとする。言ってみれば、怪我することが悪いものだと言いながらスポーツを楽しもうとしているようなものだ。かといって、怪我をしても平気な顔でスポーツを楽しめばいいのかといえば、それも「信じている世界」から抜け出せていない。
いったいどれだけのお金が動いているのだろう。ホストクラブ、キャバクラ、美容関係、アパレル、映画やゲームなどの娯楽、もちろん恋人への高価なプレゼントもそうだ。そうして出費するなかで人々は本当に満たされているのだろうか。その出費のためにどれだけの労働があったのだろうか。
それをわかっていても、人はそうでなければ幸せを掴めないと思っている。また「それ以外に何をしろというのか」と言う。
そうした諸々の誤解は「すでにあるものを信じていること」からきているのだ。よって人は現実に閉じ込められてしまっているのである。
13.
よってそこを逆転しなければならない。つまり自分が信じているからそれがあるということだ。
やがていずれは科学の新しい発見やらで、太陽と地球の関係はこれまでとはまったく違う「第三の常識」がやってくるかもしれない。だがそれさえもその時点での立証であって、このように「現実」というのは常に怪しい根拠でしか成立していないのである。
青いタオルとそれを認識する自分を取り払ったら何も残らないように、本当は「何もない」のだから、怪しくて当然なのだ。
相手の浮気疑惑を問い詰めていくら相手が弁明したところで、いつも怪しさが漂うのは、その話とその話を聞いている自分の存在が最初からすでに宙に浮いた幻想であるからである。
だが、すべてが怪しいからこそ
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