懐かしい曲を聴いたときのあの切ない気持ち
懐かしい曲は
聴いていた当時の感情や雰囲気を
蘇らせてくれる
単に鼓膜を揺らすだけではなく
あなたのなかの長らく触れられてなかった
古いスイッチがオンになる
それが音楽の不思議な作用であるわけで
たとえば小学生や中学生の頃に
耳にしていた曲が不意に流れたら
毎日みていた校舎や放課後の教室や
ベージュに塗られたコンクリートの壁
響く廊下、鉄製のロッカー
下駄箱の前に敷かれていた板や
蛇口の並んだ手洗い場、
そんな当時の音や空気や光が
心のスクリーンに再現するかもしれないし
気持ちも蘇ったりするだろうということだ
同じく元気溢れていた頃によく聴いていたなら
その元気を取り戻すことができたり
新鮮な気持ちだった頃に聴いていたなら
やはり新鮮な気持ちになれたりする
そのような呼び覚ます力を持っているが
それは音楽が色褪せることなく時空を飛び越え
現在にも存在できるからにある
そしてそうであるからこそ泣きたくなる
いまだって嫌なことや辛いことで
泣きたい気持ちになったりするだろうけども
それとは次元の違う何かが込み上げてくる
何かをずっと見失っているような
息の詰まる感じ
だけども
その大切なものが何であるのかは
未だはっきりわからないようなね
心に放映される懐かしい思い出をみつめながら
そんなもどかしさに切なくなるわけだ
むしろ日頃の己が
違う自分になろうとして
欲しいものを得たりおしゃれをしてみたり
新しい出会いを求めたり
正しく生きてみたいと思ったりするのも
突き詰めてみれば
その同じ切なさを埋めたいからだったりする
もちろん完全には埋まらないが
いつかそうして何かを探していた今日の日を
“懐かしく”思うのだろう
そうだね
そのときようやく
あなたはみつけているんだ
そしてまさにその同じ理由で
いままでみつけられなかった
毎日学校に通っていた頃
声の響く廊下や壁や教室があった
何気なく流れていた曲があった
すべてはそのときの己とひとつだったゆえ
己からはそれをみることができなかった
そのように
すべてが当たり前にそこにあったからこそ
何かを目指して生きていた
胸を躍らせてくれるものや楽しいこと
幸せになること
つまりそこにないものを探しているあなたがいた
そんなあなたが
その当たり前の世界と共にいたんだ
だからみつけられなかった
ゆえに大切な何かが見失われていても
それはいつもここにあるわけで
決して失われてはいないということ
そしてもしあなたが”それ”を
いまここにみることができたなら
音楽だけが時間を超越しているのではなく
むしろ時間など流れていないことに気づくだろう
つまりあの頃の躍動や空気が
いまもここに再現されるのは
この世という”見かけ”の背後にあるものが
なんら変わることなく
「いまここ」にあり続けているからにある
言いかえれば
空に浮かぶ雲のように
人生の風景は移り変わっていくけども
空そのものは変わりなくあるのと同じ
だからあなたが”それ”をみたなら
それは雲ではなく空をみたということだ
そしてより重要なことは
懐かしい音楽を聴いて思い出される光景というのは
大体は特定的で断片的だろうけども
それは”当時”に雲を生きていたあなたが
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