あなたの居場所

葉からおちた水滴が
湖面に溶け去るように

じゃあ魂が解放されるとき
“どこ”に溶け合うのだろう?

 

1

さて、若いうちはそれなりに自分の存在だとか
生まれてきた意味だとか
そういうのにこだわるもので

性格にもよるが
たとえばその思いが
人から注目を浴びたいという欲求になる人もいる

早熟に色気づいてみたり
なにかのコンテストに応募したり

その動因は「私はここにいる」という
いまにも爆発しそうな思いで溢れているからだ

そこまでしない人であっても
やはり他人と対立したり
わかってもらえないと塞ぎ込んだり

つまりこの大きな流れのなかで
自分というちいさな点がちゃんとあるように

それをくっきりさせて消えないようにと
いわばどちらも寂しさの裏返しにあるわけだ

もちろん「そんなんじゃない」と
さまざまな理由をあげるだろうけども
しかしそれは表面的な理屈であって
その根本にあるのは
あまりに儚い自らの存在への問いにある

 

2

ところが年齢や人生を重ねるごとに
今度は注目されたくなくなるもので

もちろんこれも人によるけども
大半の人は派手な服や車などは
敬遠する傾向にあるだろうし

会社などでみんなと違う意見を
わざわざ主張することも
あまりしなくなるだろう

あとでわかるように話の着地点は
“そうじゃない人”も同じなので
とりあえずこのまま進めていくが

どうして自分を出さなくなるのかといえば
それは自分を抑えているのではなく
「まあいいかな」という諦観のさきに
理屈をこえた安堵をみるからだ

ところがその
「注目を浴びたくない」というのと
「注目を浴びたい」というのは
同じ直感を得ているわけでね

というのは双方とも
「大きな流れ」をここにみているからにある

これもまた
「そんなのしらない」と言葉では語るが
しかし安堵にせよ
飲み込まれそうな巨大な何かにせよ
それがまさにそのことなんだ

 

3

つまり大きな流れのなかで
己が存在する意味や理由を見出して
ちいさな点を浮かび上がらせようとするのか

それとも
ちいさな点をあえて消し去って
大きな流れのみがそこにあるのか

どちらにしても
“居場所”はここにあるということ

もちろん若い人は
自分を急き立てるばかりに夢中で
それができるのは
背景があるからこそであることを
忘れてたりするがね

それゆえ焦りや渇望との戦いとなるが
むしろ年を取って落ち着くのは
そこに気づくからにある

 

4

あなたは居場所を探してきたが
ずっとここにあったんだ

それは生きる場であり
帰っていく場でもある

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