苦しみから回復するプロセス

人生がなぜ苦しいのかといえば
それは「自然に生きていないから」にある

不自然な生き方をしてるということだね

しかし不自然な生き方をやめるには
どうすればいいのだろう?

そして「自然な生き方が苦しくない」とは
そもそもどういう意味なのか?

 

大きな何かが動いてる

このように捉えてみようか

たとえば日頃あなたは
呼吸や胃腸の消化の活動について
意識していない

なぜ意識しないのかといえば
それらは自然に活動しているからだ

高度で複雑なシステムが
“それ自体”で動いている

だがそれはいつも話しているように
体の内部だけで留まるものではない

呼吸をするには酸素が当然必要で
酸素は植物がなければならない
そして植物が生育するには地球と太陽
つまり宇宙全体のバランスがあってこそにある

胃腸の消化にしても
それは”食べ物”との関係のことであり
作物にしろ水にしろすべては地表に生まれる
だから呼吸と同じく
宇宙全体が活動している経過の”一部”が
この体として現れているにすぎない

だがあなたは日頃から呼吸や消化活動に
意識を向けているわけではないだろう

むしろこうした”自然のプロセス”には
普段気づかないわけであって
それは言いかえれば
気づかない限り(意識化しない限り)
それは呼吸でも消化活動でもないんだ

いまも地球のどこかで雨が降ってる
そうして遠いどこかで雨が降ってるからこそ
あなたのいる場所の天候や気温がある

だけども遠いどこかのことなど
あなたは意識しないし知りもしない

つまり遠いどこかのそれが
“雨”であるかどうかなど関係なく
全体的な何かがずっと動き続けている

それが”自然”となる

 

存在することは”不自然”

ではあなたが呼吸や胃腸を
「意識する」のはどういうときだろう?

たとえばいまこうして
呼吸や胃腸という文字を見ただけで
意識が向けられることになる

つまり呼吸や胃腸の活動が”存在“しはじめる

だがこうして”存在”した呼吸というのは
どうも不自然なものだ

鼻腔を通る空気や
横隔膜の動きが確認できるが
しかしそうして確認するほど
抵抗してるような無理した感じがある

“この呼吸”は
本当に”存在していないときの呼吸”と
同じだろうか?

つまり呼吸に意識を向けていなかったとき
本当にこのような
ぎこちなさが続いていたのだろうか

そうではないね

そもそも「ぎこちなくなかった」からこそ
あなたは呼吸や胃腸の活動を
知らなかったのであって
それは存在していなかったんだ

ただ十全に流れている全体があった

だからこうして自ら意識を向けると
それは”出現”するが
本来の流れから切り離されてしまい
苦しいものとなる

これが”不自然”の原理にある

そしてここが重要だが
逆に呼吸や胃腸の方から
意識が引きつけられるときも
それ自体で動き続けている自然のプロセスが
「おかしくなったとき」にある

実際そうだね

歯が痛いときや胃が痛いとき
それは本来の自然の活動が
“自然でない”からであって

このときようやくずっと流れていたものが
「姿」をもって現れることになる

だがこうして姿として現れたものは
“不自然”なもの
つまり自然でないからこそ
姿をもって”存在”しているんだ

要するに
存在すること自体がそもそも不自然なことであり

これもよく話すように
だからこそ釈迦は「人生は苦である」と述べ
キリスト教では
生まれながらに人は罪を背負っているという
「原罪」の概念が伝えられてきた

このことを単純に受け取ってしまえば
まるで生きてることが間違いのようになるが
そうではない

たしかに仏教もキリスト教も
“死後”の世界に楽園を設定しているが
だが釈迦もイエスも自殺しなかったのは
私たちが日頃理解している死もまた
それは本当の死ではなく
“存在する死”にすぎないからだ

つまり”本当の死”とは
意識が向けられていない
「自然そのもの」のことであり

あなたの知らない間に活動しているはずの
肺や胃腸などの自然な”生命の活動”こそが
“死”なんだ

わかるかい
本当の生こそが死であり
永遠の生命こそが死である

だから釈迦やイエスは
「本当に生きよ」と伝えていた

その正しい意味は
私たちは本当はそもそも死んでいるのであって
日頃の「生きてる」は幻想にすぎないということ

だがこの見た目の生を脱したとき
ここにずっと続いている死
すなわち「本当の生」とひとつになる

だから生きてることが間違いだと悲観したり
この世に虚しさを感じるのは
見た目の生に留まっているだけであり
自殺は幻想の”生”(=苦しみ)を繰り返すだけとなる

なぜなら私たちは幻想として何度も蘇るからだ

たとえば前にも手記で話したが
神の遊戯である「リーラ」には
ダンスの意味も含まれているゆえ
すべては”神の踊り”にある

その踊りが”表現”されたものが
私たち人間の観念世界となる

まさに「産めよ増やせよ満ちよ」と
旧約聖書で記されているとおり

彩り豊かな大地の花々や野生の動物たち
海を泳ぎまわる魚の群れ
そして天空の星々

春になれば山や渓流や茂みのなかの
あらゆる生き物に愛が行き渡り
新しい生命が溢れる

そんな”人間だけ”が知るカラフルな世界
すべてが同時発生的に動き続ける世界

個々の”存在”をみれば不完全だが
それは植物と呼吸が切り離せないのと同じ
つまり全体はひとつの完全性としてあり続けている

いまここで”この全体”を感じてみよう
どこまでも遠く果てしなく
すべてが一緒にひとつになって動いてる

これを神の踊りといわずして
なんだというのだろう

 

 

回復のプロセス

そしてこの神のダンス、つまり”自然”は
あなたの人生そのものにも
置き換えることができる

冒頭で話したように
なぜ人生が苦しいのかといえば
それは人生が不自然だからにある

人間関係でもそう

たとえば親となら
相手を意識せずに交流できるかもしれない

それは自然なものだ

だが親に腹を立てたり
「どうしてわかってくれないの?」と
自分の意見で説得しようとするならば
そこには不自然さが生まれている

不自然だからこそ苦しいのであって
それは呼吸と同じ

だが歯痛や胃痛のように
こちらは自然にしていても
相手のほうから不自然を生み出すこともある

こちらが意識しなくても
意識が引きつけられるわけだね

もちろん歯を治療するように
あなたは相手に詰め寄ったり
部屋でひとり頭を抱え続けるだろう

“治療”しなければ
その不自然は治らないからだ

だがここに罠があって
たとえば歯痛にしても
三大疾病のように大きな病気にしても
その回復を期待して治療を続けるより

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