意識と無意識(後編)
さてここまで私たちは、肉体も精神も巨大なひとつからの末端部分であることをみてきた。つまり体は水や食べ物で形成され、思考は人類の記憶でできている。ゆえに「自分は個人的な存在である」という小さな視野は、無力さしか見えてこないということだ。
ゆえに全体とともにあること、すなわち「共生」を前提に生きていることが基本なのだ。まずは肉体を地球のサイクルと同化させること、人工的な食品や環境は可能な限り避けるようにし、極端に刺激の強い光や音、興奮を娯楽にすることもやめる。常にナチュラルであることだ。
そして今回の話の要である無意識、すなわち精神のコンディションにおいても、あなたという個人と全体との相互の関係性に注意を払っておくことが大事なのである。ある活動をしていて、その活動そのものについて洞察する視点を「メタ」というが、つまり現実を見据えながらメタ現実を生きる者が、聖人や覚者と呼ばれる存在となる。
連載ラストの今回は、あなたがそうした「覚者」に到達するには、どうあれば良いのか、そしてそれは「どういう世界を生きることであるのか」を記していこう。
生い茂る大地
無意識という巨大な記憶の地表に私たちは「生えて」いる。この生えているものが「魂」だ。たとえば100人いれば100人の「感じた思い」が地表(記憶層)に貯蔵される。再びその蓄積された思いが、生えている魂たちの意識上に流れ込み、それぞれの魂の現実として再現される仕組みとなっている。
さらにはその「再現する材料(現実を構成する観念)」も無意識層からやってくる。だから私たち(魂たち)は風に揺れる草花と同じだといえる。意味も理由もなく、そして「何もせず」に、ただ世界を浮かべて生えているのだ。
その眺められている世界が己の生である。私たちは自分の人生について、誰とも違う独自的なものと捉えているが、実際は同時に生えている無数の魂のなかの別バージョンにすぎない。
これまでに人類が体験した「思い」を地表から受け取るだけだからだ。つまり人類は同じことを繰り返しているのだ。古代ギリシアでも現代の日本でも、ご近所さんとの井戸端会議の内容は同じである。家が石造りかツーバイフォーか、衣類が布一枚かユニクロかの違いだけが、意識上で表示されるバージョンの差異なのである。
個人的世界
このようにすべては「意識上だけで展開された世界」だ。日頃の風景にしろ他者にしろ、各々の意識上に浮かべられた「結果」としての表象にすぎない。
だから「大元」は同じでありながら、私たちは違う光景や時代設定の世界を見ている。あなたの隣に生えている別の魂の世界は「古代ギリシア」かもしれない。なぜならあなたは古代ギリシアという名称やイメージといった観念を知っているからだ。
これは時間やパラレルワールド論のトリックとなる。つまりすべては並行して「いま同時に生えている」のだ。時間など流れておらず、私たちは気付かずぬうちに「現在から別の現在へ」変化しているだけなのである。
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