素敵だと思える気持ち
雑貨屋を眺めていたら
豆腐を賽の目にカットする道具があった
それはとても単純な構造で
容器の網目を通せば
ひとつの豆腐がたくさんのブロックに
切り分けられるという仕組みにある
ここにあるはずなのに
さて人は恋をしているとき
当然その相手と
結ばれたい思いに駆られている
それは切り分けられた豆腐が
もとはひとつだったことを
その相手を通じてみているようなものだ
しかし切り分けれた豆腐からすれば
愛は”ここ”にあるのに
どうしても結ばれないというジレンマにある
たとえその人と一緒に暮らしてみても
愛しい人は握ったその手のまだ遠い向こうに
離れているように感じる
恋人たち
だがこの眼差しで現世を眺めてみれば
街はいつもロマンスで溢れていることに気づく
店員と客や
行き交う通行人や電車の乗客など
この世は誰もが隣人同士を装っているけども
その光景を透かせてみえる”あの世”では
本当はみんなが結ばれた恋人同士なんだとね
ゆえに誰もが
相手と分かり合おうとするし
自分を分かってもらおうとする
喧嘩するのも競い合ったりするのも
その裏返しなんだ
素敵だと思える気持ち
だからみんなが隣人にみえているのは
豆腐カッターで分けられたようなもの
そしてそれゆえに
この賑やかな世界が成り立ってる
だけどもこの賑やかさが単なるノイズではなく
幼い頃に居間で微睡んでいたときの
家族の談笑がすぐ近くに感じられたような
あの不思議な安らぎに思えるのは
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