使い捨てロボットが意志をもつとき-9

いつみても毎日を楽しそうに暮らしているひとたち、どこへいっても愛の花々で敷き詰めらているような世界にいる仲睦まじい恋人たち、愛ある暮らしに満たされた仲の良い家族、ビジネスで思うがままに成功しているひとたち、人生のすべてをそのためだけに捧げられるような「自分のやること」を持っている、情熱に溢れたひとたち。

つまり最高の人生をつかんだハッピーな人たちに共通するもの、それが前回話した「そのこと」である。彼らは「そのこと」を知っている。しかし彼らに憧れてその真似事ばかりをしたり、後を追いかけたりしているような人たちは「そのこと」を知らない。

ことわざに「大功を成す者は衆に謀らず」というものがある。

これは、大きなことを成し遂げる者は、大多数の意見に惑わされず自分自身で決断し実行をする、という意味であるけどもこれはまさにその通りであり、ハッピーの原理を表しているといえる。だからといって、周囲の意見を耳にせず自己中心的に振る舞えということではない。ここでいう「大多数の意見」とは無意識の雲に蓄積された概念一覧のことだ。だから無意識に支配されないこと、すなわち自在でありたいならば、己の魂を「既存の理屈に重ねない」ということにその真意がある。

大功(大きな成功や功績)は、他人に見せつけて評価を仰ぐものではない。恋愛もそうだね、みんな自分磨きをして異性に魅力的だと思ってもらおうとする。街を歩けば人々はまるでスーパーに陳列された商品みたいだ。資本主義の社会になって物質的な貧富の差だけが生じたのではない。こうした「恋愛」や「幸せ」も商品化してしまったのだ。

マルクス資本論ではこのように書いてある。

「みずからの生産物で自分自身の欲求を満足させるものは、使用価値を作るのは確かであるとはいえ、商品は作らない。商品であるためには、それが他者に対する使用価値を、つまり社会的使用価値を生産しなければならない。」

つまり「商品」というのは、それを作った人が持っているだけでは商品とはいわず、それを必要とする人がいて、はじめて商品となるということである。

近年の恋愛事情とは、いかに自分を売り出して、そして「いかに相手に愛してもらえるか」が焦点となっている。つまり自分を商品化しているのだ。すべては「お客のニーズ」のためにね。そしてその引き換えに「孤独の心」を埋めてもらう対価を得ようとする。だが商品というのは流行がある。その度に自分は振り回されて、そしてなにより自分自身も、相手という「商品」を見定めする。

以前も話したことがあるが、商売というのはお客のニーズのみに振り回されたら終わりなのだ。そもそも商売というものは現世での単なる現象に過ぎず、その背後には、それが商売であろうが恋愛であろうが、同じ潮流がある。その流れに乗ることが大事なのであり、いわばその流れを体感するために現世の現象があるのだ。スリルを求めるのに、ジェットコースターに乗るか、ハラハラする映画を観るか、または勝敗を争うスポーツを観戦するか、それらの背後に流れているパワーは同じなのである。

だが現在の社会はその表面に現れているものだけが重視されてしまうようになった。物質的な豊かさ、恋愛事情、そうしたことにまつわる苦悩、だがいったい何に苦悩しているというのだろう。

恋愛にしても、いかに愛してもらって孤独を癒してもらえるかではなく、いかに「相手を愛していくことができるか」なのだ。それ以外に「ない」のだよ。これは前回の冒頭での意味と同じである。

そこに大功を成す者たちが知る「そのこと」があるのだ。

ボイルの法則

では表面的な現実の向こう側にある潮流、すなわち「殻の外側にある流れ」に、乗り込んでいくということについて、わかりやすい例を歴史からひとつあげておこう。

1600年代にロバートボイルという物理学者がいた。彼は錬金術の伝統を受け継いでいて、金属を変質させる可能性を信じていた。つまり鉄を純金に変えようとする実験に没頭していたのである。当時はまだ原子や分子といった原子物理学の基盤がない時代だ。あったのは紀元前400年ごろの古代ギリシアから語られていたアルケーの概念のひとつである、「火、土、水、空気」の「四元素論」だった。古代の人が自然を観察していると「それらの4つにまで分解できることに気づいた」というものであり、言い換えれば、この世のすべてはその四つの元素の組み合わせでできていると信じられていた。

そんな「常識」が2000年も続いていたなか、ボイルによって「ボイルの法則」が発見される。温度が一定ならば、気体の体積が圧力に反比例するというものだが、たとえばスキューバダイビングで浮上するときに、息を吐きながらでないと肺が破裂する危険があるが、それがボイルの法則だ。体温が一定であるとき、浮上によって水圧が下がると肺の中の空気の体積がそのぶん増える。海外のお菓子の袋の接着が強いのも、空路で破裂しないための配慮となる。

つまりボイルは「この自然現象の発見」をボイルの法則という名称をつけて「説明」をしたわけだ。実験してみれば、どんなときも誰の目の前でもそれはそのようになる。つまり実証したわけである。「経験的に」それは確かなものとなった。

殻の中をさまよい続ける日々

ところが、ボイル自身がどうして気圧と圧力がこのような関係になるのかわからなかった。彼はこれまでの史実上の科学の実証された記録を調べ尽くし、その理由を探そうとしたけども出てこない。また彼は錬金術師でもあったから「四元素論」も照らし合わせて考察を続けた。だが決定的な答えが出てこなかった。まさに「行き詰まり」である。

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  1. tamatama3 より:
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    • 涅槃の書-自分 より:
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